炎症は「発赤・熱感・腫脹・疼痛」という4徴候で知られていますが、その中でも「なぜ痛いのか」は重要なポイントです。本記事では、炎症時に痛みが生じる仕組みを、分子レベル(メディエーター)から整理し、臨床的な理解につなげていきます。
1.炎症と痛みの関係(結論)
炎症で痛みが生じる主な理由は以下の3つです。
- 発痛物質の産生(化学的刺激)
- 浮腫による圧迫(機械的刺激)
- 神経の感作(過敏化)
→ この3つが組み合わさることで、炎症部位は「痛みやすい状態」になります。
2.発痛物質とは何か(化学的刺激)
炎症が起こると、組織からさまざまな化学物質(炎症メディエーター)が放出されます。
■主な発痛物質
- ブラジキニン
- プロスタグランジン(PGE2)
- ヒスタミン
- セロトニン
- サブスタンスP
■作用
- 侵害受容器(痛みセンサー)を直接刺激
- 痛みの閾値を低下させる(少しの刺激でも痛い)
特にプロスタグランジンは「痛みを感じやすくする」作用が強く、NSAIDs(消炎鎮痛薬)が効く理由でもあります。
3.浮腫による圧迫(機械的刺激)
炎症では血管透過性が亢進し、血漿成分が組織に漏れ出します。
■その結果
- 組織の腫れ(浮腫)
- 内圧の上昇
この圧力が神経終末を機械的に刺激し、痛みとして感じられます。
→ 「腫れると痛い」という現象の正体です。
4.神経の感作(過敏化)
炎症が持続すると、神経自体が「痛みを感じやすい状態」に変化します。
■末梢感作
- 発痛物質により侵害受容器の閾値が低下
- 弱い刺激でも痛みとして認識
■中枢感作
- 脊髄・脳での痛み信号の増幅
- 痛みが長引く・広がる
→ これにより、「触れるだけで痛い(アロディニア)」状態が生じることがあります。
5.炎症性疼痛の流れ(まとめ)
炎症による痛みは、以下のような流れで発生します。
- 組織損傷
- 炎症メディエーター放出
- 侵害受容器の刺激・感作
- 神経伝導(末梢 → 脊髄 → 脳)
- 痛みとして認識
→ 「化学刺激+機械刺激+神経変化」の複合現象です。
6.臨床での意味(重要)
炎症性疼痛には以下の特徴があります。
- 安静時でも痛む
- ズキズキする(拍動性)
- 熱感・腫脹を伴う
また、治療の考え方としては:
- 炎症を抑える(薬物・安静)
- 血流を調整する
- 神経の過敏状態を落ち着かせる
という多角的アプローチが必要になります。
7.東洋医学的な視点
東洋医学では、炎症による痛みは主に以下の概念で説明されます。
「不通則痛(通らざれば則ち痛む)」という原則は、現代医学の血流障害や神経感作とも対応します。
8.鍼灸との関連
鍼灸は炎症性疼痛に対して以下のように作用します。
- 局所血流の改善(浮腫軽減)
- 発痛物質の除去促進
- 内因性オピオイドの放出
- 神経の興奮性調整
そのため、炎症による痛みに対して「鎮痛+調整」の両面からアプローチ可能です。
9.まとめ
- 炎症で痛むのは「発痛物質・圧迫・神経感作」のため
- プロスタグランジンなどが痛みを増強する
- 浮腫が神経を圧迫する
- 神経自体が過敏になる
- 複合的に痛みが形成される
炎症性疼痛は単なる「刺激」ではなく、分子レベルから神経系まで連続した反応であることを理解することが重要です。
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