心身症(Psychosomatic Disorders)まとめ

■ 定義

心身症とは、 心理的・社会的ストレスが発症や経過に大きく関与し、 実際に身体の臓器や機能に異常を生じる疾患の総称である。 「気のせい」ではなく、 身体疾患が存在し、その病状にストレスが深く関与していることが特徴である。


■ 原因・危険因子

  • 慢性的なストレス
  • 職場・学校・家庭での人間関係
  • 過労
  • 睡眠不足
  • 不安や抑うつ
  • 性格傾向(完璧主義・責任感が強いなど)
  • 自律神経の乱れ

■ 病態

ストレスにより視床下部・自律神経・内分泌・免疫系のバランスが乱れ、 交感神経の過活動やホルモン分泌異常が生じる。 その結果、消化器・循環器・呼吸器・皮膚などさまざまな臓器に機能障害や症状が現れる。


■ 心身症としてみられる主な疾患

  • 過敏性腸症候群(IBS)
  • 機能性ディスペプシア(FD)
  • 気管支喘息
  • 本態性高血圧
  • 緊張型頭痛
  • 片頭痛
  • アトピー性皮膚炎
  • 円形脱毛症
  • 慢性じんましん

■ 主な症状

  • 慢性的な疲労感
  • 頭痛
  • 肩こり
  • 胃痛・胃もたれ
  • 腹痛・下痢・便秘
  • 動悸
  • 息苦しさ
  • めまい
  • 睡眠障害
  • 食欲不振

■ 検査・診断

  • 詳細な問診
  • 身体診察
  • 血液検査
  • 画像検査
  • 必要に応じた内視鏡検査
  • 身体疾患の評価とストレス要因の確認

心身症は、まず器質的疾患を除外したうえで、 心理社会的要因が病態に深く関与していることを総合的に判断して診断される。


■ 西洋医学的治療

● 原因疾患の治療

  • 各臓器疾患に対する標準治療

● 精神・心理的治療

  • 認知行動療法(CBT)
  • カウンセリング
  • ストレスマネジメント

● 薬物療法

  • 抗不安薬
  • 抗うつ薬
  • 睡眠薬(必要時)
  • 症状に応じた対症療法

● 生活指導

  • 十分な休養
  • 睡眠改善
  • 適度な運動
  • ストレスコントロール

■ 予防

  • 規則正しい生活
  • 十分な睡眠
  • 適度な運動
  • 趣味やリラクゼーション
  • ストレスを一人で抱え込まない
  • 仕事と休息のバランスを保つ

■ 東洋医学的解釈

● 基本病態

● 証別分類


■ 鍼灸アプローチ

● 基本方針

  • 自律神経の調整
  • 気血の巡りを整える
  • ストレス緩和
  • 睡眠改善
  • QOL向上

● 主要経穴

● 配穴例

● 手技

  • 穏やかな軽刺激を基本とする
  • リラックスできる環境で施術する
  • 症状よりも全身状態を重視して施術する

■ 鍼灸適応と注意点

● 適応

  • ストレス関連症状
  • 慢性疲労
  • 睡眠障害
  • 胃腸機能の改善
  • 肩こり・頭痛など身体症状

● 注意(レッドフラッグ)

  • 急激な体重減少
  • 吐血・下血
  • 激しい胸痛・呼吸困難
  • 持続する高熱
  • 麻痺・意識障害などの神経症状
  • 自殺念慮・希死念慮

※「ストレスが原因」と自己判断せず、まず器質的疾患の有無を確認することが重要である。重篤な身体疾患や精神疾患が疑われる場合は、内科・精神科・心療内科などで適切な診察を受ける。鍼灸は標準治療を補完する目的で行う。


■ ポイント

  • 心身症は「心理社会的要因が身体疾患の発症・経過に影響する疾患」である。
  • 身体疾患が存在する点が、身体症状症(身体症状症・身体症状症群)との違いである。
  • 自律神経・内分泌・免疫系の異常が病態に関与する。
  • 過敏性腸症候群(IBS)、機能性ディスペプシア(FD)、気管支喘息などは代表的な心身症である。
  • 治療は身体疾患への治療に加え、ストレスマネジメントや認知行動療法を組み合わせる。
  • 鍼灸では自律神経調整やストレス緩和を目的とした施術が行われる。

■ まとめ

心身症は、 心理的・社会的ストレスが身体疾患の発症や悪化に深く関与する疾患群である。 自律神経や内分泌、免疫機能のバランスが乱れることで、 消化器・循環器・呼吸器・皮膚など多様な症状が現れる。 治療は身体疾患に対する標準治療を基本とし、 心理療法や生活改善を組み合わせて行う。 鍼灸は自律神経の調整やストレス緩和、 睡眠や消化機能の改善、 QOL向上を目的とした補助療法として活用される。

不眠症(Insomnia Disorder)まとめ

■ 定義

不眠症とは、 十分な睡眠の機会や環境があるにもかかわらず、 睡眠がうまくとれず、日中の生活に支障をきたす睡眠障害である。 一時的な不眠ではなく、 一般的には週3回以上、3か月以上続く慢性的な状態を指す。


■ 原因・危険因子

  • 精神的ストレス
  • うつ病・不安障害などの精神疾患
  • 加齢
  • 生活リズムの乱れ
  • 夜勤・交代勤務
  • スマートフォン・パソコンの長時間使用
  • カフェイン・アルコール・ニコチン
  • 慢性疼痛
  • 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害

■ 病態

睡眠と覚醒を調節する脳の機能や、 自律神経のバランスが乱れることで、 交感神経が過剰に働き、 入眠や睡眠維持が困難になる。 精神的・身体的要因が複雑に関与することが多い。


■ 分類

● 入眠障害

  • 寝つくまで30分以上かかる

● 中途覚醒

  • 夜中に何度も目が覚める

● 早朝覚醒

  • 予定よりかなり早く目覚め、その後眠れない

● 熟眠障害

  • 十分寝ても眠った感じがしない

■ 主な症状

  • 寝つきが悪い
  • 夜中に目が覚める
  • 朝早く目が覚める
  • 熟睡感がない
  • 日中の眠気
  • 集中力低下
  • 倦怠感
  • イライラ
  • 頭痛

■ 合併しやすい疾患

  • うつ病
  • 不安障害
  • 自律神経失調症
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 高血圧

■ 検査・診断

  • 問診
  • 睡眠日誌
  • 睡眠質問票
  • 睡眠ポリグラフ検査(必要時)
  • 身体疾患・精神疾患の評価

■ 西洋医学的治療

● 睡眠衛生指導

  • 規則正しい生活
  • 就寝・起床時間を一定にする
  • 寝室環境の改善
  • 夕方以降のカフェイン摂取を控える

● 認知行動療法(CBT-I)

  • 慢性不眠症の第一選択治療の一つ

● 薬物療法

  • オレキシン受容体拮抗薬
  • メラトニン受容体作動薬
  • ベンゾジアゼピン受容体作動薬
  • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

■ 予防

  • 規則正しい睡眠習慣
  • 適度な運動
  • 朝日を浴びる
  • 寝る前のスマートフォン使用を控える
  • 寝酒を避ける
  • ストレスをため込まない

■ 東洋医学的解釈

● 基本病態

● 証別分類


■ 鍼灸アプローチ

● 基本方針

  • 自律神経の調整
  • 心神を安定させる
  • 気血の巡りを改善する
  • 睡眠の質を高める
  • ストレスの軽減

● 主要経穴

● 配穴例

● 手技

  • 軽刺激を基本とする
  • リラックスできる静かな環境で施術する
  • 過度な刺激や長時間の施術は避ける

■ 鍼灸適応と注意点

● 適応

  • 慢性的な不眠
  • ストレス性不眠
  • 自律神経の乱れ
  • 肩こり・頭痛を伴う不眠
  • 睡眠の質の改善

● 注意(レッドフラッグ)

  • 重度のうつ症状や希死念慮
  • 睡眠時無呼吸が疑われる大きないびき・無呼吸
  • 著しい日中の眠気による事故リスク
  • 薬剤の影響が疑われる不眠
  • 急激に悪化した不眠

※不眠が長期間続く場合や、うつ病・睡眠時無呼吸症候群などが疑われる場合は、精神科・心療内科・睡眠外来などで原因を精査する。鍼灸は睡眠衛生指導や認知行動療法、薬物療法を補完する目的で行う。


■ ポイント

  • 不眠症は「入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害」に分類される。
  • 慢性不眠症は一般的に週3回以上、3か月以上持続する。
  • 睡眠衛生指導と認知行動療法(CBT-I)は治療の基本である。
  • 睡眠薬だけでなく、オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬も用いられる。
  • うつ病、不安障害、睡眠時無呼吸症候群との鑑別・合併評価が重要である。
  • 日中の眠気や集中力低下は交通事故や労働災害のリスクとなる。

■ まとめ

不眠症は、 十分な睡眠環境があるにもかかわらず、 睡眠が障害され日中の生活に支障をきたす睡眠障害である。 原因はストレスや精神疾患、生活習慣、身体疾患など多岐にわたる。 治療は睡眠衛生指導と認知行動療法(CBT-I)を基本とし、 必要に応じて薬物療法を併用する。 鍼灸は自律神経の調整や心身の緊張緩和、 睡眠の質の改善を目的とした補助療法として活用される。

不安障害(Anxiety Disorders)まとめ

■ 定義

不安障害とは、 過度で持続的な不安や恐怖によって、 日常生活や社会生活に支障をきたす精神疾患の総称である。 誰にでもある「不安」とは異なり、 状況に見合わない強い不安や身体症状が続くことが特徴である。


■ 主な種類

  • 全般不安症(GAD)
  • パニック症(パニック障害)
  • 社交不安症(社交不安障害)
  • 限局性恐怖症
  • 広場恐怖症

■ 原因・危険因子

  • 精神的ストレス
  • 遺伝的要因
  • 幼少期の体験
  • 脳内神経伝達物質(セロトニン・GABA・ノルアドレナリンなど)の機能異常
  • 慢性的な睡眠不足
  • 性格傾向(心配性・完璧主義など)

■ 病態

脳内の不安を制御する神経回路や神経伝達物質のバランスが乱れ、 危険がない状況でも強い不安反応が起こる。 交感神経が過剰に働くことで、 動悸や発汗などの身体症状も現れやすい。


■ 主な症状

● 精神症状

  • 過度な不安
  • 緊張感
  • 落ち着かない
  • 集中力低下
  • 将来への過剰な心配
  • イライラしやすい

● 身体症状

  • 動悸
  • 息苦しさ
  • 発汗
  • 手足の震え
  • 筋肉の緊張
  • 肩こり
  • 頭痛
  • めまい
  • 胃腸症状(吐き気・下痢など)
  • 不眠

■ 合併しやすい疾患

  • うつ病
  • パニック障害
  • 不眠症
  • 自律神経症状
  • アルコール依存症

■ 検査・診断

  • 問診
  • 心理評価尺度
  • DSM-5・ICD診断基準
  • 身体疾患の除外(血液検査・甲状腺機能検査など)

■ 西洋医学的治療

● 薬物療法

  • SSRI
  • SNRI
  • 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など)

● 精神療法

  • 認知行動療法(CBT)
  • 心理教育
  • リラクゼーション法

● 生活療法

  • 規則正しい生活
  • 十分な睡眠
  • 適度な運動
  • ストレス管理

■ 予防

  • 睡眠不足を避ける
  • 適度な運動
  • ストレスをため込まない
  • 相談できる環境を持つ
  • カフェイン・アルコールの過剰摂取を控える

■ 東洋医学的解釈

● 基本病態

● 証別分類


■ 鍼灸アプローチ

● 基本方針

  • 自律神経の調整
  • 精神的緊張の緩和
  • 睡眠の改善
  • 気血の巡りを整える
  • QOL向上

● 主要経穴

● 配穴例

● 手技

  • 穏やかな軽刺激を基本とする
  • 安心できる施術環境を整える
  • 呼吸を整えながら施術する

■ 鍼灸適応と注意点

● 適応

  • 軽度~中等度の不安症状の補助療法
  • 肩こり・頭痛など身体症状
  • 睡眠障害
  • ストレス関連症状
  • 自律神経症状

● 注意(レッドフラッグ)

  • 自殺念慮・希死念慮
  • 著しい日常生活障害
  • 急激な症状悪化
  • 幻覚・妄想など精神病症状
  • 強い抑うつ症状の合併

※症状が強く日常生活に支障がある場合や、自殺念慮・精神病症状を伴う場合は、精神科・心療内科での専門的治療を優先する。鍼灸は薬物療法や精神療法を補完する目的で行う。


■ ポイント

  • 不安障害は過度な不安や恐怖によって日常生活に支障をきたす精神疾患群である。
  • 全般不安症(GAD)は慢性的な過度の心配が特徴である。
  • 動悸・発汗・振戦など自律神経症状を伴いやすい。
  • 治療の基本は認知行動療法(CBT)とSSRIなどの薬物療法である。
  • うつ病やパニック障害を合併することが多い。
  • 身体疾患(甲状腺機能亢進症、不整脈など)との鑑別が重要である。

■ まとめ

不安障害は、 過度で持続的な不安や恐怖によって、 精神症状と身体症状の両方が現れる精神疾患群である。 交感神経の過活動により、 動悸・発汗・筋緊張などを伴うことが多い。 治療は認知行動療法や薬物療法を中心に行われる。 鍼灸は自律神経の調整や睡眠改善、 身体症状の緩和、 QOL向上を目的とした補助療法として活用される。

うつ病(Depression・大うつ病性障害)まとめ

■ 定義

うつ病とは、 気分の落ち込みや意欲の低下を中心とした精神疾患である。 一時的な気分の落ち込みとは異なり、 日常生活や社会生活に支障をきたす状態が2週間以上続くことが特徴である。 身体症状を伴うことも多く、 「こころ」と「からだ」の両方に影響を及ぼす。


■ 原因・危険因子

  • 強いストレス
  • 喪失体験(死別・離別など)
  • 過労・睡眠不足
  • 遺伝的要因
  • 脳内神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン・ドパミン)の機能異常
  • 慢性疾患
  • 産後や更年期などのホルモン変化

■ 病態

脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることに加え、 ストレスや遺伝的素因が複雑に関与して発症すると考えられている。 自律神経や内分泌機能にも影響を及ぼし、 精神症状だけでなく身体症状も現れる。


■ 主な症状

● 精神症状

  • 抑うつ気分
  • 興味・喜びの喪失
  • 意欲低下
  • 集中力低下
  • 自己評価の低下
  • 罪悪感
  • 悲観的思考

● 身体症状

  • 不眠・過眠
  • 食欲低下・食欲亢進
  • 体重減少・増加
  • 全身倦怠感
  • 頭痛
  • 肩こり
  • 便秘
  • 動悸

■ 合併しやすい疾患

  • 不安障害
  • パニック障害
  • 睡眠障害
  • アルコール依存症
  • 生活習慣病

■ 検査・診断

  • 問診(DSM-5・ICD診断基準など)
  • 心理検査
  • 血液検査(身体疾患の除外)
  • 甲状腺機能などの評価

■ 西洋医学的治療

● 薬物療法

  • SSRI
  • SNRI
  • NaSSA
  • 三環系・四環系抗うつ薬

● 精神療法

  • 認知行動療法(CBT)
  • 対人関係療法
  • 心理教育

● 生活療法

  • 十分な休養
  • 睡眠リズムの改善
  • ストレスマネジメント
  • 適度な運動

■ 予防

  • 十分な睡眠
  • 規則正しい生活
  • ストレスの適切な発散
  • 相談できる環境を持つ
  • 無理を続けない

■ 東洋医学的解釈

● 基本病態

● 証別分類


■ 鍼灸アプローチ

● 基本方針

  • 自律神経の調整
  • 精神的緊張の緩和
  • 睡眠の質の改善
  • 気血の巡りを整える
  • QOL向上

● 主要経穴

● 配穴例

● 手技

  • 穏やかな軽刺激を基本とする
  • 安心できる施術環境を整える
  • 疲労度や精神状態に合わせて刺激量を調整する

■ 鍼灸適応と注意点

● 適応

  • 軽度~中等度の抑うつ症状の補助療法
  • 睡眠障害
  • 肩こり・頭痛など身体症状
  • 慢性疲労
  • ストレス関連症状

● 注意(レッドフラッグ)

  • 自殺念慮・希死念慮
  • 自傷行為
  • 著しい食事摂取不能
  • 極端な不眠が続く
  • 急激な症状悪化
  • 幻覚・妄想など精神病症状

※自殺念慮や著しい症状悪化がみられる場合は、速やかに精神科・心療内科での診察を優先する。鍼灸は薬物療法や精神療法を補完する目的で行い、単独治療として用いるべきではない。


■ ポイント

  • 抑うつ気分または興味・喜びの喪失が中心症状である。
  • 症状が2週間以上持続し、日常生活に支障をきたすことが診断の重要な目安である。
  • 身体症状(不眠・食欲低下・倦怠感など)を伴うことが多い。
  • 治療の基本は休養・薬物療法・精神療法である。
  • SSRI・SNRIは代表的な抗うつ薬である。
  • 双極性障害との鑑別が重要である。
  • 自殺リスクの評価は最優先事項である。

■ まとめ

うつ病は、 抑うつ気分や意欲低下を中心とする精神疾患であり、 精神症状だけでなく睡眠障害や倦怠感などの身体症状も伴うことが多い。 治療は十分な休養を基本とし、 薬物療法や精神療法を組み合わせて行われる。 鍼灸は自律神経の調整や睡眠の改善、 身体症状の緩和やQOL向上を目的とした補助療法として活用されるが、 重症例では精神科・心療内科での専門的治療を優先する。

肝がん(肝細胞がん・Hepatocellular Carcinoma)まとめ

■ 定義

肝がんとは、 肝臓に発生する悪性腫瘍である。 多くは肝細胞がん(HCC)であり、 慢性肝炎や肝硬変を背景として発症することが多い。


■ 原因・危険因子

  • B型肝炎ウイルス(HBV)感染
  • C型肝炎ウイルス(HCV)感染
  • 肝硬変
  • アルコール性肝障害
  • 脂肪肝・NASH(非アルコール性脂肪肝炎)
  • 糖尿病
  • 肥満
  • アフラトキシン(カビ毒)への曝露

■ 病態

慢性的な肝細胞の炎症と再生が繰り返されることで、 遺伝子異常が蓄積し、 肝細胞ががん化する。 初期には症状が乏しいが、 進行すると肝機能低下や門脈圧亢進を伴うことがある。


■ 分類

● 原発性肝がん

  • 肝細胞がん(最も多い)
  • 肝内胆管がん

● 転移性肝がん

  • 胃がん・大腸がん・膵がんなどから転移する

■ 主な症状

初期は無症状のことが多い。

  • 全身倦怠感
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 右季肋部痛
  • 腹部膨満感
  • 黄疸
  • 腹水
  • 発熱

■ 合併症

  • 肝硬変
  • 門脈圧亢進症
  • 食道・胃静脈瘤
  • 腹水
  • 肝性脳症
  • 腫瘍破裂による腹腔内出血

■ 検査

  • 腹部超音波検査
  • 造影CT検査
  • 造影MRI検査
  • 血液検査(肝機能)
  • 腫瘍マーカー(AFP・PIVKA-II)
  • 肝生検(必要時)

■ 西洋医学的治療

● 手術療法

  • 肝切除術

● 局所療法

  • ラジオ波焼灼療法(RFA)
  • マイクロ波凝固療法

● 血管内治療

  • 肝動脈化学塞栓療法(TACE)

● 薬物療法

  • 分子標的薬
  • 免疫チェックポイント阻害薬

● 肝移植

  • 適応を満たす症例で行われる

■ 予防

  • B型肝炎ワクチン接種
  • 肝炎ウイルスの治療
  • 禁酒・節酒
  • 肥満予防
  • 脂肪肝の改善
  • 定期的な腹部超音波検査

■ 東洋医学的解釈

● 基本病態

● 証別分類


■ 鍼灸アプローチ

● 基本方針

  • QOL向上
  • 食欲維持
  • 倦怠感軽減
  • 術後・治療後の回復支援
  • 自律神経調整

● 主要経穴

● 配穴例

● 手技

  • 軽刺激を基本とする
  • 出血傾向がある場合は慎重に施術する
  • 腹水や著しい全身衰弱では体位や刺激量に十分配慮する

■ 鍼灸適応と注意点

● 適応

  • 術後の体力低下
  • 食欲不振
  • 慢性的な倦怠感
  • 抗がん治療による悪心
  • QOL向上

● 注意(レッドフラッグ)

  • 黄疸の出現・増悪
  • 急激な腹部膨満(腹水)
  • 吐血・下血
  • 意識障害(肝性脳症)
  • 激しい右上腹部痛(腫瘍破裂など)

※肝がんが疑われる場合や、肝硬変・慢性肝炎の患者に新たな症状が出現した場合は、速やかに消化器内科・肝臓専門医を受診する。鍼灸は標準治療を補完する目的で行う。


■ ポイント

  • 原発性肝がんの約90%以上は肝細胞がんである。
  • B型・C型肝炎ウイルス感染が最大の危険因子である。
  • 肝硬変を背景に発症することが多い。
  • 腫瘍マーカーはAFPとPIVKA-IIが代表的である。
  • 早期は無症状のことが多く、定期的な超音波検査が重要である。
  • ラジオ波焼灼療法(RFA)や肝動脈化学塞栓療法(TACE)は代表的な治療法である。
  • 進行すると黄疸・腹水・肝性脳症など肝不全症状を呈する。

■ まとめ

肝がんは、 主に肝細胞から発生する悪性腫瘍であり、 B型・C型肝炎や肝硬変を背景に発症することが多い。 初期には自覚症状が乏しいため、 慢性肝疾患のある患者では定期的な画像検査と腫瘍マーカー測定が重要である。 治療は肝切除術、ラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法、薬物療法、肝移植などを病期や肝機能に応じて選択する。 鍼灸は術後や薬物療法中の倦怠感・食欲低下の改善、 QOL向上を目的とした補助療法として活用される。

乳がん(Breast Cancer)まとめ

■ 定義

乳がんとは、 乳腺(主に乳管や小葉)の細胞から発生する悪性腫瘍である。 女性に最も多いがんの一つであるが、 男性にもまれに発症する。 早期発見・早期治療によって高い治癒率が期待できる。


■ 原因・危険因子

  • 女性であること
  • 加齢
  • 家族歴・遺伝(BRCA1・BRCA2遺伝子など)
  • 初経年齢が早い
  • 閉経年齢が遅い
  • 未出産・高齢初産
  • 肥満(閉経後)
  • 飲酒
  • ホルモン補充療法

■ 病態

乳管や小葉の細胞に遺伝子異常が蓄積し、 異常細胞が増殖して乳がんとなる。 進行すると周囲組織へ浸潤し、 リンパ節や骨・肺・肝臓などへ転移する。


■ 分類

● 非浸潤がん

  • 乳管内にとどまる
  • 早期がん

● 浸潤がん

  • 周囲組織へ広がる
  • 転移の可能性がある

■ 主な症状

  • 乳房のしこり
  • 乳房の変形
  • 乳頭陥没
  • 乳頭からの血性分泌物
  • 乳房の皮膚のくぼみ
  • 腋窩リンパ節腫大
  • 乳房痛(初期には少ない)

■ 転移しやすい部位

  • 腋窩リンパ節
  • 肝臓

■ 検査

  • マンモグラフィ
  • 乳房超音波検査(エコー)
  • MRI
  • 針生検
  • CT・PET-CT
  • ホルモン受容体検査
  • HER2検査

■ 西洋医学的治療

● 手術療法

  • 乳房温存術
  • 乳房切除術
  • センチネルリンパ節生検

● 放射線療法

  • 乳房温存術後に行われることが多い

● 薬物療法

  • 抗がん剤
  • ホルモン療法
  • 分子標的薬(HER2陽性など)
  • 免疫療法(一部症例)

■ 予防・早期発見

  • 乳房セルフチェック
  • 定期的なマンモグラフィ検診
  • 適度な運動
  • 適正体重の維持
  • 節酒

■ 東洋医学的解釈

● 基本病態

● 証別分類


■ 鍼灸アプローチ

● 基本方針

  • QOL向上
  • 術後回復支援
  • 疼痛緩和
  • 倦怠感軽減
  • 自律神経調整

● 主要経穴

● 配穴例

● 手技

  • 患部への直接刺激は避ける
  • 術後は創部やリンパ浮腫に配慮する
  • 全身状態を確認しながら軽刺激で施術する

■ 鍼灸適応と注意点

● 適応

  • 術後の肩こり・可動域制限
  • 倦怠感
  • 食欲低下
  • 抗がん剤による悪心
  • QOL向上

● 注意(レッドフラッグ)

  • 新たなしこり
  • 乳頭からの血性分泌
  • 皮膚の陥凹・えくぼ症状
  • 急速に大きくなる腫瘤
  • 著しいリンパ節腫大

※乳房に異常を認めた場合は速やかに乳腺外科を受診する。鍼灸は標準治療(手術・薬物療法・放射線療法)を補完する目的で行う。


■ ポイント

  • 女性で最も罹患数の多いがんである。
  • 最も多い初発症状は乳房のしこりである。
  • スクリーニング検査はマンモグラフィである。
  • 確定診断は画像検査と生検で行う。
  • 腋窩リンパ節へ転移しやすい。
  • 遠隔転移では骨転移が多い。
  • ホルモン受容体やHER2の有無が治療方針に重要である。

■ まとめ

乳がんは、 乳腺から発生する悪性腫瘍であり、 女性に最も多いがんの一つである。 乳房のしこりや乳頭異常を契機に発見されることが多く、 マンモグラフィ検診による早期発見が重要である。 治療は手術・放射線療法・薬物療法を組み合わせて行われる。 鍼灸は術後の疼痛や肩関節機能の改善、 抗がん治療による副作用の軽減、 QOL向上を目的とした補助療法として活用される。

肺がん(Lung Cancer)まとめ

■ 定義

肺がんとは、 肺や気管支の細胞から発生する悪性腫瘍である。 日本におけるがん死亡原因の上位を占める疾患であり、 早期発見・早期治療が予後を大きく左右する。


■ 原因・危険因子

  • 喫煙(最大の危険因子)
  • 受動喫煙
  • 加齢
  • 大気汚染
  • アスベスト曝露
  • ラドンガス
  • 慢性肺疾患(COPDなど)
  • 家族歴

■ 病態

肺や気管支の細胞に遺伝子異常が蓄積すると、 異常細胞が増殖し肺がんを形成する。 進行すると肺内だけでなく、 リンパ節や脳・骨・肝臓・副腎などへ転移する。


■ 分類

● 非小細胞肺がん(約80~85%)

  • 腺がん(最も多い)
  • 扁平上皮がん
  • 大細胞がん

● 小細胞肺がん(約15~20%)

  • 進行が速い
  • 喫煙との関連が強い
  • 早期から転移しやすい

■ 主な症状

初期は無症状のことも多い。

  • 長引く咳
  • 血痰
  • 息切れ
  • 胸痛
  • 嗄声(声のかすれ)
  • 体重減少
  • 全身倦怠感
  • 反復する肺炎

■ 転移しやすい部位

  • リンパ節
  • 肝臓
  • 副腎

■ 検査

  • 胸部X線検査
  • 胸部CT検査
  • 気管支鏡検査
  • 生検(組織検査)
  • PET-CT
  • 遺伝子検査(EGFR・ALKなど)
  • 腫瘍マーカー(CEA・CYFRA・ProGRPなど)

■ 西洋医学的治療

● 手術療法

  • 肺葉切除術
  • 区域切除術
  • リンパ節郭清

● 放射線療法

  • 根治照射
  • 定位放射線治療

● 薬物療法

  • 抗がん剤
  • 分子標的薬
  • 免疫チェックポイント阻害薬

■ 予防

  • 禁煙
  • 受動喫煙を避ける
  • 定期健康診断
  • 胸部画像検査
  • 職業性粉じん対策

■ 東洋医学的解釈

● 基本病態

● 証別分類


■ 鍼灸アプローチ

● 基本方針

  • QOL向上
  • 呼吸機能補助
  • 倦怠感軽減
  • 食欲改善
  • 抗がん治療副作用の軽減補助

● 主要経穴

● 配穴例

● 手技

  • 軽刺激を基本とする
  • 体力に応じて施術する
  • 呼吸状態を十分確認する

■ 鍼灸適応と注意点

● 適応

  • 術後の体力低下
  • 慢性的な倦怠感
  • 呼吸苦の軽減補助
  • 食欲低下
  • 抗がん剤による悪心・全身倦怠感

● 注意(レッドフラッグ)

  • 血痰・喀血
  • 呼吸困難の増悪
  • 強い胸痛
  • 急激な体重減少
  • 持続する咳(3週間以上)

※肺がんが疑われる症状がある場合は速やかに呼吸器内科を受診する。鍼灸は手術・薬物療法・放射線療法など標準治療を補完する目的で行う。


■ ポイント

  • 最大の危険因子は喫煙である。
  • 肺がんは非小細胞肺がんと小細胞肺がんに大別される。
  • 腺がんは非喫煙者にもみられ、最も頻度が高い。
  • 小細胞肺がんは進行・転移が速い。
  • 確定診断は画像検査と組織検査(生検)で行う。
  • 脳・骨・肝臓・副腎へ転移しやすい。
  • 長引く咳や血痰は重要な警告症状である。

■ まとめ

肺がんは、 肺や気管支から発生する悪性腫瘍であり、 喫煙が最大の危険因子である。 初期には症状が乏しいが、 進行すると咳・血痰・胸痛・息切れなどがみられる。 治療は手術・放射線療法・薬物療法を病期に応じて組み合わせて行う。 鍼灸は術後の体力回復や呼吸機能の補助、 抗がん治療による副作用軽減やQOL向上を目的とした補助療法として活用される。