病理学 10-1 炎症と気血の停滞

はじめに

炎症は現代医学では、

  • 発赤(rubor)
  • 熱感(calor)
  • 腫脹(tumor)
  • 疼痛(dolor)

を特徴とする生体防御反応とされています。

一方、東洋医学では、 これらの変化は「気血の停滞(気滞瘀血)」として理解することができます。


炎症の本質(現代医学)

炎症とは、 組織障害に対する防御反応であり、

  • 血管拡張
  • 血流増加
  • 血管透過性亢進
  • 白血球浸潤

などのプロセスを含みます。


東洋医学的な基本対応

炎症所見 東洋医学的解釈
発赤・熱感 熱・気の亢進
腫脹 水滞・湿
疼痛 気滞瘀血

特に重要なのは、

「流れが滞ると痛みが生じる(不通則痛)」

という原則です。


気血の停滞とは

気滞(きたい)

  • 気の流れの停滞
  • 緊張・ストレスと関連
  • 移動性の痛み

瘀血(おけつ)

  • 血流障害・うっ血
  • 固定性の痛み
  • 刺すような痛み

炎症はこの両者が重なった状態と捉えられます。


炎症と気血停滞の対応モデル

① 初期炎症(急性期)

  • 血管拡張 → 気の過剰・熱
  • 血流増加 → 気血の偏在

② 滲出期

③ 慢性化

つまり、炎症は「気滞 → 水滞 → 瘀血」へと移行する動的過程と整理できます。


疼痛との関係

炎症による疼痛は、

  • 発痛物質(ブラジキニンなど)
  • 組織圧の上昇
  • 神経感作

によって生じますが、 東洋医学では「気血の流れが阻害された結果」と理解します。


経絡との関係

気血の停滞は、 経絡の流れの障害として現れます。

その結果、

  • 圧痛点
  • 硬結
  • 冷えまたは熱感

などが出現します。

これらは、 現代医学的には

  • 炎症部位
  • トリガーポイント

に相当します。


鍼灸との関連

基本戦略

「通すこと=治療」

急性炎症への対応

  • 過度な刺激は避ける
  • 遠隔穴で調整
  • 清熱作用を意識

慢性炎症への対応

  • 局所刺鍼で瘀血改善
  • 温熱療法で血流促進

臨床応用の具体例

肩関節炎

  • 急性期 → 熱・腫脹 → 清熱・遠隔治療
  • 慢性期 → 硬結・可動域制限 → 活血・局所刺鍼

腰痛

  • 急性 → 気滞(筋緊張)
  • 慢性 → 瘀血(血流低下)

統合的理解

現代医学と東洋医学を統合すると、

炎症=生体防御反応

気血の停滞という機能的異常

と整理できます。

つまり、「炎症は単なる反応ではなく、流れの破綻である」という視点が重要です。


まとめ

  • 炎症は発赤・熱感・腫脹・疼痛を特徴とする
  • 東洋医学では気滞瘀血水滞として理解される
  • 不通則痛(流れの停滞=痛み)が基本原則
  • 炎症は動的に変化するプロセスである
  • 鍼灸は「流れを通す」ことで炎症に介入する

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