■ 定義
不眠症とは、 十分な睡眠の機会や環境があるにもかかわらず、 睡眠がうまくとれず、日中の生活に支障をきたす睡眠障害である。 一時的な不眠ではなく、 一般的には週3回以上、3か月以上続く慢性的な状態を指す。
■ 原因・危険因子
- 精神的ストレス
- うつ病・不安障害などの精神疾患
- 加齢
- 生活リズムの乱れ
- 夜勤・交代勤務
- スマートフォン・パソコンの長時間使用
- カフェイン・アルコール・ニコチン
- 慢性疼痛
- 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害
■ 病態
睡眠と覚醒を調節する脳の機能や、 自律神経のバランスが乱れることで、 交感神経が過剰に働き、 入眠や睡眠維持が困難になる。 精神的・身体的要因が複雑に関与することが多い。
■ 分類
● 入眠障害
- 寝つくまで30分以上かかる
● 中途覚醒
- 夜中に何度も目が覚める
● 早朝覚醒
- 予定よりかなり早く目覚め、その後眠れない
● 熟眠障害
- 十分寝ても眠った感じがしない
■ 主な症状
- 寝つきが悪い
- 夜中に目が覚める
- 朝早く目が覚める
- 熟睡感がない
- 日中の眠気
- 集中力低下
- 倦怠感
- イライラ
- 頭痛
■ 合併しやすい疾患
- うつ病
- 不安障害
- 自律神経失調症
- 睡眠時無呼吸症候群
- 高血圧
■ 検査・診断
- 問診
- 睡眠日誌
- 睡眠質問票
- 睡眠ポリグラフ検査(必要時)
- 身体疾患・精神疾患の評価
■ 西洋医学的治療
● 睡眠衛生指導
- 規則正しい生活
- 就寝・起床時間を一定にする
- 寝室環境の改善
- 夕方以降のカフェイン摂取を控える
● 認知行動療法(CBT-I)
- 慢性不眠症の第一選択治療の一つ
● 薬物療法
- オレキシン受容体拮抗薬
- メラトニン受容体作動薬
- ベンゾジアゼピン受容体作動薬
- 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
■ 予防
- 規則正しい睡眠習慣
- 適度な運動
- 朝日を浴びる
- 寝る前のスマートフォン使用を控える
- 寝酒を避ける
- ストレスをため込まない
■ 東洋医学的解釈
● 基本病態
● 証別分類
■ 鍼灸アプローチ
● 基本方針
- 自律神経の調整
- 心神を安定させる
- 気血の巡りを改善する
- 睡眠の質を高める
- ストレスの軽減
● 主要経穴
● 配穴例
● 手技
- 軽刺激を基本とする
- リラックスできる静かな環境で施術する
- 過度な刺激や長時間の施術は避ける
■ 鍼灸適応と注意点
● 適応
- 慢性的な不眠
- ストレス性不眠
- 自律神経の乱れ
- 肩こり・頭痛を伴う不眠
- 睡眠の質の改善
● 注意(レッドフラッグ)
- 重度のうつ症状や希死念慮
- 睡眠時無呼吸が疑われる大きないびき・無呼吸
- 著しい日中の眠気による事故リスク
- 薬剤の影響が疑われる不眠
- 急激に悪化した不眠
※不眠が長期間続く場合や、うつ病・睡眠時無呼吸症候群などが疑われる場合は、精神科・心療内科・睡眠外来などで原因を精査する。鍼灸は睡眠衛生指導や認知行動療法、薬物療法を補完する目的で行う。
■ ポイント
- 不眠症は「入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害」に分類される。
- 慢性不眠症は一般的に週3回以上、3か月以上持続する。
- 睡眠衛生指導と認知行動療法(CBT-I)は治療の基本である。
- 睡眠薬だけでなく、オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬も用いられる。
- うつ病、不安障害、睡眠時無呼吸症候群との鑑別・合併評価が重要である。
- 日中の眠気や集中力低下は交通事故や労働災害のリスクとなる。
■ まとめ
不眠症は、 十分な睡眠環境があるにもかかわらず、 睡眠が障害され日中の生活に支障をきたす睡眠障害である。 原因はストレスや精神疾患、生活習慣、身体疾患など多岐にわたる。 治療は睡眠衛生指導と認知行動療法(CBT-I)を基本とし、 必要に応じて薬物療法を併用する。 鍼灸は自律神経の調整や心身の緊張緩和、 睡眠の質の改善を目的とした補助療法として活用される。

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