生理学 1-2 内部環境と体液区分

■ 概要

内部環境とは、細胞を取り巻く体液環境を指す概念である。 19世紀にクロード・ベルナールが提唱し、生体の恒常性維持の中心的概念となった。

人体は約60%が水分で構成されており、その水分は一定の区画(コンパートメント)に分かれて存在する。 この体液区分の理解は、循環・呼吸・腎機能・電解質異常の理解の基礎となる。


■ 体液の全体像

成人の体液は大きく「細胞内液」と「細胞外液」に分けられる。

区分 体重比 特徴
細胞内液(ICF) 約40% 細胞内の液体
細胞外液(ECF) 約20% 細胞外に存在

※成人男性(体重60kg)の場合、総体液量は約36Lとなる。


■ 細胞外液の内訳

細胞外液はさらに以下に分類される。

区分 体重比 役割
血漿 約5% 血管内の液体成分
間質液 約15% 細胞と毛細血管の間
リンパ液 微量 組織液の回収

内部環境とは主にこの「細胞外液」を指す。 細胞は直接血液と接しているのではなく、間質液を介して物質交換を行っている。


■ 電解質組成の違い

細胞内液と細胞外液では、主要イオンが異なる。

主要陽イオン 主要陰イオン
細胞内液 K⁺ リン酸イオン・タンパク質
細胞外液 Na⁺ Cl⁻

この濃度差は、細胞膜のNa⁺/K⁺ポンプによって維持され、 膜電位や神経・筋の興奮性の基盤となる。


■ 体液移動の原理

体液は以下の物理的原理によって移動する。

  • 拡散
  • 浸透
  • 静水圧
  • 膠質浸透圧

毛細血管では、静水圧と膠質浸透圧のバランスにより、 濾過と再吸収が行われる(スターリングの法則)。


■ 体液異常と病態

  • 脱水(細胞外液減少)
  • 浮腫(間質液増加)
  • 低ナトリウム血症
  • 高カリウム血症

体液バランスの破綻は、循環不全や意識障害など重篤な状態につながる。


■ 東洋医学的視点

東洋医学では、体液は「津液(しんえき)」として捉えられる。

  • 津:さらさらした体液(唾液・汗など)
  • 液:濃厚な体液(関節液・髄など)

水滞(すいたい)や痰飲は、体液代謝異常の概念に相当する。

現代医学的な体液区分と、東洋医学的な津液代謝は、 理論体系は異なるが「体内の水分循環」という共通テーマを持つ。


■ 鍼灸との関連

鍼刺激は局所血流を増加させ、毛細血管透過性やリンパ循環に影響を与えることが報告されている。

  • 浮腫の軽減
  • 筋硬結部の血流改善
  • 自律神経を介した腎血流調節

これらは体液バランスの調整という観点から説明可能である。

特に慢性疼痛では、局所循環障害と間質液停滞が関与することがあり、 鍼治療はその微小循環改善を通じて作用すると考えられる。


■ まとめ

体液は細胞内液と細胞外液に区分され、内部環境は主に細胞外液を指す。 電解質組成の差は生体機能の基盤であり、体液移動は物理法則に従って行われる。

体液バランスの破綻は浮腫や脱水などの病態を生む。

鍼灸は局所循環や自律神経調節を通じて、 体液環境の安定化に寄与する可能性がある。

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