生理学 2-5 運動制御

■ 定義

運動制御とは、随意運動および不随意運動を適切に実行するために、 中枢神経系が筋活動を統合・調整する仕組みである。 単なる筋収縮ではなく、姿勢制御・協調運動・筋緊張調整を含む統合的機能である。


■ 運動制御の階層構造

  • 大脳皮質(運動野):随意運動の発動
  • 大脳基底核:運動の開始・抑制・円滑化
  • 小脳:運動の協調・誤差修正
  • 脳幹:姿勢制御・筋緊張調整
  • 脊髄:反射・最終共通路

■ 上位運動ニューロンと下位運動ニューロン

① 上位運動ニューロン(UMN)

  • 大脳皮質から脊髄前角へ投射
  • 主に錐体路を形成
  • 筋緊張の抑制的調整を行う

② 下位運動ニューロン(LMN)

  • 脊髄前角細胞・脳神経運動核
  • 筋へ直接支配
  • 「最終共通路」と呼ばれる

■ 運動単位(motor unit)

1個の運動ニューロンと、それに支配される筋線維群を運動単位という。

  • 精密運動:小さな運動単位(眼筋など)
  • 粗大運動:大きな運動単位(大腿筋など)

■ 筋緊張の調整機構

  • 伸張反射(筋紡錘)
  • ゴルジ腱器官(張力感知)
  • γ運動ニューロンによる筋紡錘感受性調整

■ 大脳基底核の役割

  • 不要な運動の抑制
  • 運動開始の調整
  • 筋緊張の調整

機能異常ではパーキンソン症状(無動・固縮・振戦)が出現する。


■ 小脳の役割

  • 協調運動の調整
  • 運動誤差の修正
  • 姿勢保持

障害時には運動失調(ataxia)が生じる。


■ 臨床的所見

障害部位 主な所見
上位運動ニューロン 痙性麻痺・反射亢進・バビンスキー徴候
下位運動ニューロン 弛緩性麻痺・筋萎縮・線維束性収縮
小脳 運動失調・測定障害
大脳基底核 固縮・振戦・無動

■ 東洋医学的関連

運動制御異常は、東洋医学では主に「肝」・「腎」・「気血」との関連で理解される。

① 肝と筋

② 腎と骨・運動基盤

  • 腎は骨を主る
  • 腎精不足 → 下肢筋力低下・歩行不安定
  • 加齢性運動機能低下との関連

③ 気血との関係

  • 気虚 → 易疲労・筋力低下
  • 瘀血 → 局所運動制限・拘縮
  • 寒邪 → 筋緊張亢進・疼痛増悪

■ 鍼灸との関連

① 筋緊張調整

  • 筋紡錘・腱器官への機械刺激
  • γループ調整による筋緊張正常化
  • 痙縮緩和作用

② 中枢神経への影響

  • 脊髄反射回路の抑制・促通調整
  • 脳内血流改善
  • ドーパミン系への影響(研究報告あり)

③ 運動再学習との併用

  • リハビリテーションとの併用で可塑性促進
  • 固縮軽減後の運動パターン再構築
  • 慢性疼痛による運動抑制の解除

④ 臨床応用例

  • 脳血管障害後の痙縮
  • パーキンソン症状の補助療法
  • 頸肩部緊張性障害
  • スポーツ障害における運動制御改善

■ まとめ

  • 運動制御は階層的統合システムである
  • 上位・下位ニューロンの理解が重要
  • 基底核と小脳が運動の質を決定する
  • 東洋医学では肝・腎・気血との関連で理解される
  • 鍼灸は筋緊張・反射回路・中枢可塑性に影響を与える可能性がある

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