■ 定義
運動制御とは、随意運動および不随意運動を適切に実行するために、 中枢神経系が筋活動を統合・調整する仕組みである。 単なる筋収縮ではなく、姿勢制御・協調運動・筋緊張調整を含む統合的機能である。
■ 運動制御の階層構造
- 大脳皮質(運動野):随意運動の発動
- 大脳基底核:運動の開始・抑制・円滑化
- 小脳:運動の協調・誤差修正
- 脳幹:姿勢制御・筋緊張調整
- 脊髄:反射・最終共通路
■ 上位運動ニューロンと下位運動ニューロン
① 上位運動ニューロン(UMN)
- 大脳皮質から脊髄前角へ投射
- 主に錐体路を形成
- 筋緊張の抑制的調整を行う
② 下位運動ニューロン(LMN)
- 脊髄前角細胞・脳神経運動核
- 筋へ直接支配
- 「最終共通路」と呼ばれる
■ 運動単位(motor unit)
1個の運動ニューロンと、それに支配される筋線維群を運動単位という。
- 精密運動:小さな運動単位(眼筋など)
- 粗大運動:大きな運動単位(大腿筋など)
■ 筋緊張の調整機構
- 伸張反射(筋紡錘)
- ゴルジ腱器官(張力感知)
- γ運動ニューロンによる筋紡錘感受性調整
■ 大脳基底核の役割
- 不要な運動の抑制
- 運動開始の調整
- 筋緊張の調整
機能異常ではパーキンソン症状(無動・固縮・振戦)が出現する。
■ 小脳の役割
- 協調運動の調整
- 運動誤差の修正
- 姿勢保持
障害時には運動失調(ataxia)が生じる。
■ 臨床的所見
| 障害部位 | 主な所見 |
|---|---|
| 上位運動ニューロン | 痙性麻痺・反射亢進・バビンスキー徴候 |
| 下位運動ニューロン | 弛緩性麻痺・筋萎縮・線維束性収縮 |
| 小脳 | 運動失調・測定障害 |
| 大脳基底核 | 固縮・振戦・無動 |
■ 東洋医学的関連
運動制御異常は、東洋医学では主に「肝」・「腎」・「気血」との関連で理解される。
① 肝と筋
② 腎と骨・運動基盤
- 腎は骨を主る
- 腎精不足 → 下肢筋力低下・歩行不安定
- 加齢性運動機能低下との関連
③ 気血との関係
■ 鍼灸との関連
① 筋緊張調整
- 筋紡錘・腱器官への機械刺激
- γループ調整による筋緊張正常化
- 痙縮緩和作用
② 中枢神経への影響
- 脊髄反射回路の抑制・促通調整
- 脳内血流改善
- ドーパミン系への影響(研究報告あり)
③ 運動再学習との併用
- リハビリテーションとの併用で可塑性促進
- 固縮軽減後の運動パターン再構築
- 慢性疼痛による運動抑制の解除
④ 臨床応用例
- 脳血管障害後の痙縮
- パーキンソン症状の補助療法
- 頸肩部緊張性障害
- スポーツ障害における運動制御改善
■ まとめ
- 運動制御は階層的統合システムである
- 上位・下位ニューロンの理解が重要
- 基底核と小脳が運動の質を決定する
- 東洋医学では肝・腎・気血との関連で理解される
- 鍼灸は筋緊張・反射回路・中枢可塑性に影響を与える可能性がある
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