病理学 10-3 慢性炎症と瘀血

はじめに

炎症は本来、 組織修復のための一過性の反応ですが、長期に持続することで病的状態へ移行します。

この「慢性炎症」は、 東洋医学では瘀血(おけつ)」を中心とした停滞状態として理解することができます。


慢性炎症とは(現代医学)

慢性炎症とは、 低強度の炎症反応が長期間持続する状態であり、

  • マクロファージの持続的活性化
  • サイトカインの慢性的産生
  • 組織破壊と修復の反復

が特徴です。

いわゆる「静かな炎症(silent inflammation)」です。


慢性炎症の原因

  • 感染の持続
  • 生活習慣(食事・運動不足)
  • 肥満
  • ストレス
  • 加齢

慢性炎症と疾患

  • 動脈硬化
  • 糖尿病
  • がん
  • 関節疾患
  • 神経変性疾患

多くの慢性疾患の基盤となります。


瘀血とは

瘀血とは、「血の流れが滞り、機能を失った状態」を指します。

  • 血流低下
  • 血液の粘稠化
  • 微小循環障害

などを含みます。


慢性炎症と瘀血の対応関係

① 血流障害

炎症が持続すると、 血管内皮が障害され、 血流が低下します。

→ 瘀血

② 組織破壊と修復の反復

慢性炎症では、 修復不全が続きます。

→ 血の質の低下(瘀血

③ 発痛物質の蓄積

炎症性物質が除去されず、 局所に停滞します。

→ 停滞(瘀血

④ 線維化・硬化

組織が硬くなり、 流れがさらに悪化します。

→ 瘀血の固定化


病態の進行モデル

つまり、炎症の最終形は「瘀血と捉えることができます。


臨床的特徴(瘀血としての慢性炎症)

  • 固定性の痛み
  • 刺すような痛み
  • 慢性的な違和感
  • 皮膚の色調変化(暗色)
  • 硬結の存在

経絡との関係

瘀血は、 経絡の流れを阻害します。

その結果、

  • 圧痛点
  • トリガーポイント
  • 冷え・しびれ

が出現します。

これは、 慢性炎症の局所表現ともいえます。


鍼灸との関連

基本戦略

活血化瘀

  • 血流改善
  • 停滞物質の除去
  • 組織再生の促進

局所治療

  • 硬結への刺鍼
  • 深部への刺激

全身調整

  • 気の流れを整える(行気)
  • 炎症体質の改善

温熱療法

慢性炎症では、 温めることで循環が改善します。


生活習慣との関係

  • 運動不足 → 瘀血促進
  • 冷え → 血流低下
  • ストレス → 気滞 → 瘀血

統合的理解

慢性炎症は、「炎症が終わらない状態」ではなく、「流れが回復できない状態」です。

つまり、慢性炎症=瘀血を中心とした停滞病態と捉えることが重要です。


まとめ

  • 慢性炎症は低強度の炎症が持続する状態である
  • 東洋医学では瘀血として理解される
  • 炎症は気滞・湿から瘀血へ移行する
  • 慢性痛や硬結は瘀血の表現である
  • 鍼灸は活血化瘀により改善する

0 件のコメント:

コメントを投稿