生理学 4-1 心臓の電気生理

心臓は電気的興奮により拍動する臓器である。 機械的収縮(ポンプ機能)は、常に電気現象に先行される。

したがって、心機能を理解するためには 電気生理学的基盤の把握が不可欠である。


■ 刺激伝導系

① 洞房結節(SA node)

右心房上部に存在する生理的ペースメーカー。 自動能を持ち、毎分約60〜100回の発火を行う。

② 房室結節(AV node)

心房と心室の間で興奮を遅延させる。 この遅延が心室充満時間を確保する。

③ ヒス束 → 脚 → プルキンエ線維

心室全体へ高速伝導し、 同期収縮を実現する。


■ 活動電位の種類

① ペースメーカー細胞(洞房結節)

  • 第4相:緩徐脱分極(If電流)
  • 第0相:Ca²⁺流入
  • 第3相:K⁺流出

安静電位を持たず、自動的に脱分極する。

② 作業心筋細胞

  • 第0相:Na⁺急速流入
  • 第1相:一過性再分極
  • 第2相:プラトー相(Ca²⁺流入)
  • 第3相:K⁺流出
  • 第4相:安静電位

プラトー相の存在が、長い不応期を生む。


■ 不整脈の機序

  • 自動能異常
  • リエントリー(再興奮回路)
  • トリガードアクティビティ

電解質異常、虚血、自律神経失調が誘因となる。


■ 自律神経による調節

① 交感神経

  • β1受容体刺激
  • cAMP増加
  • Ca²⁺流入増加
  • 心拍数・伝導速度・収縮力上昇

② 副交感神経(迷走神経)

  • 洞房結節抑制
  • 房室伝導抑制
  • 心拍数低下

心拍変動(HRV)はこのバランスを反映する。


■ 東洋医学的関連

① 心主血脈

心は血脈を主るとされる。 これは単なるポンプ機能だけでなく、 リズム生成機能(洞房結節)を含む概念と解釈できる。

② 心主神明

情動変化が心拍数に直結する事実は、 「心は神を蔵す」という概念と整合する。

③ 動悸と気機逆乱

自律神経失調による洞結節興奮性亢進は、 動悸として自覚される。

これは気機の乱れとして理解可能である。

④ 瘀血と伝導障害

虚血性変化は伝導遅延を引き起こす。 慢性循環障害は瘀血概念と機能的に重なる。


■ 鍼灸との関連

① 心拍変動(HRV)改善

鍼刺激は迷走神経活動を高め、 副交感神経優位化をもたらす。

  • 安静時心拍数低下
  • ストレス耐性向上
  • 不整脈発生閾値上昇

② 視床下部-延髄中枢への影響

鍼刺激は孤束核や視床下部に影響し、 自律神経統合を調整する。

③ 精神安定作用

不安・緊張は交感神経を亢進させる。 心経・心包経への刺激は情動安定を通じ、 電気的不安定性を軽減する可能性がある。

④ 血流改善と虚血予防

一酸化窒素(NO)産生促進により 冠血流改善が期待される。


■ まとめ

  • 心臓は電気的興奮により拍動する
  • 洞房結節がペースメーカー
  • 長い不応期が強縮を防ぐ
  • 自律神経がリズムを調節する
  • 東洋医学の心・神概念と対応可能
  • 鍼灸は自律神経調整を通じ心電気活動に影響する

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