心臓は電気的興奮により拍動する臓器である。 機械的収縮(ポンプ機能)は、常に電気現象に先行される。
したがって、心機能を理解するためには 電気生理学的基盤の把握が不可欠である。
■ 刺激伝導系
① 洞房結節(SA node)
右心房上部に存在する生理的ペースメーカー。 自動能を持ち、毎分約60〜100回の発火を行う。
② 房室結節(AV node)
心房と心室の間で興奮を遅延させる。 この遅延が心室充満時間を確保する。
③ ヒス束 → 脚 → プルキンエ線維
心室全体へ高速伝導し、 同期収縮を実現する。
■ 活動電位の種類
① ペースメーカー細胞(洞房結節)
- 第4相:緩徐脱分極(If電流)
- 第0相:Ca²⁺流入
- 第3相:K⁺流出
安静電位を持たず、自動的に脱分極する。
② 作業心筋細胞
- 第0相:Na⁺急速流入
- 第1相:一過性再分極
- 第2相:プラトー相(Ca²⁺流入)
- 第3相:K⁺流出
- 第4相:安静電位
プラトー相の存在が、長い不応期を生む。
■ 不整脈の機序
- 自動能異常
- リエントリー(再興奮回路)
- トリガードアクティビティ
電解質異常、虚血、自律神経失調が誘因となる。
■ 自律神経による調節
① 交感神経
- β1受容体刺激
- cAMP増加
- Ca²⁺流入増加
- 心拍数・伝導速度・収縮力上昇
② 副交感神経(迷走神経)
- 洞房結節抑制
- 房室伝導抑制
- 心拍数低下
心拍変動(HRV)はこのバランスを反映する。
■ 東洋医学的関連
① 心主血脈
心は血脈を主るとされる。 これは単なるポンプ機能だけでなく、 リズム生成機能(洞房結節)を含む概念と解釈できる。
② 心主神明
情動変化が心拍数に直結する事実は、 「心は神を蔵す」という概念と整合する。
③ 動悸と気機逆乱
自律神経失調による洞結節興奮性亢進は、 動悸として自覚される。
これは気機の乱れとして理解可能である。
④ 瘀血と伝導障害
虚血性変化は伝導遅延を引き起こす。 慢性循環障害は瘀血概念と機能的に重なる。
■ 鍼灸との関連
① 心拍変動(HRV)改善
鍼刺激は迷走神経活動を高め、 副交感神経優位化をもたらす。
- 安静時心拍数低下
- ストレス耐性向上
- 不整脈発生閾値上昇
② 視床下部-延髄中枢への影響
鍼刺激は孤束核や視床下部に影響し、 自律神経統合を調整する。
③ 精神安定作用
不安・緊張は交感神経を亢進させる。 心経・心包経への刺激は情動安定を通じ、 電気的不安定性を軽減する可能性がある。
④ 血流改善と虚血予防
一酸化窒素(NO)産生促進により 冠血流改善が期待される。
■ まとめ
- 心臓は電気的興奮により拍動する
- 洞房結節がペースメーカー
- 長い不応期が強縮を防ぐ
- 自律神経がリズムを調節する
- 東洋医学の心・神概念と対応可能
- 鍼灸は自律神経調整を通じ心電気活動に影響する
0 件のコメント:
コメントを投稿