心周期とは、1回の心拍における機械的イベントの流れを指す。 電気的興奮(前項)に続いて、
- 心房収縮
- 心室収縮
- 心室拡張
が規則的に繰り返される。
この機械的運動の結果として生まれるのが「心拍出量(Cardiac Output)」である。
■ 心周期の流れ
① 心房収縮期
心房が収縮し、心室へ血液を送り込む。 拡張末期容積(EDV)が最大となる。
② 等容収縮期
房室弁が閉鎖し、圧上昇のみが起こる。 まだ大動脈弁は開かない。
③ 駆出期
大動脈弁が開き、血液が駆出される。 駆出量=1回拍出量(Stroke Volume)
④ 等容拡張期
半月弁が閉じ、圧が低下する。
⑤ 充満期
房室弁が開き、受動的に血液が流入する。
■ 心拍出量の定義
心拍出量(CO)= 心拍数(HR)× 1回拍出量(SV)
安静時:約5L/分 運動時:15〜25L/分以上
■ 1回拍出量を決める3因子
① 前負荷(Preload)
拡張末期容積に相当する。 フランク=スターリング機序により、 伸展が大きいほど収縮力が増す。
② 後負荷(Afterload)
血液を送り出す際の抵抗。 主に動脈圧に依存する。
③ 収縮力(Contractility)
心筋自体の収縮能。 交感神経刺激で増強。
■ 循環動態の統合
心拍出量は以下と密接に関連する:
- 静脈還流量
- 血管トーン(平滑筋)
- 血液量
- 自律神経活動
したがって心拍出量は「心臓単独の問題」ではない。
■ 東洋医学的関連
① 心主血脈の動的解釈
「心主血脈」は単なる循環の有無ではなく、 拍出量・リズム・血流分布を含む動的概念と捉えられる。
② 気と拍出量
心拍出量低下は「気虚」の臨床像と重なる。
- 易疲労
- 息切れ
- 冷え
- 集中力低下
③ 血虚と前負荷
循環血液量不足は前負荷低下を招く。 これは血虚の機能的側面と一致する。
④ 瘀血と後負荷
血管抵抗増大は後負荷上昇を意味する。 慢性血管収縮状態は瘀血概念と重なる。
⑤ 腎と循環血液量
腎は水液代謝を主る。 循環血液量調整(RAAS系)は腎機能と密接に関連する。
■ 鍼灸との関連
① 自律神経調整と心拍数制御
鍼刺激は迷走神経活動を高め、 安静時心拍数を適正化する。
② 末梢血管抵抗の調整
一酸化窒素(NO)放出促進により、 血管平滑筋弛緩が起こる。
→ 後負荷低減 → 心仕事量軽減
③ 静脈還流の改善
筋ポンプ作用促進や微小循環改善により、 前負荷が安定する。
④ ストレス緩和と収縮力安定
慢性ストレスは交感神経過剰を招く。 適切な鍼治療は過緊張を緩和し、 心機能の過負荷を軽減する。
⑤ 全身循環改善という視点
鍼灸は局所治療ではなく、
- 心(ポンプ)
- 血管(抵抗)
- 血液量
- 自律神経
を同時に調整する可能性がある。
■ まとめ
- 心周期は機械的拍動の流れである
- 心拍出量=心拍数×1回拍出量
- 前負荷・後負荷・収縮力がSVを規定する
- 循環は心・血管・血液・神経の統合系である
- 東洋医学の気・血・腎概念と対応可能
- 鍼灸は自律神経と血管調整を通じ循環に影響する
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