生理学 4-2 心周期と心拍出量

心周期とは、1回の心拍における機械的イベントの流れを指す。 電気的興奮(前項)に続いて、

  • 心房収縮
  • 心室収縮
  • 心室拡張

が規則的に繰り返される。

この機械的運動の結果として生まれるのが「心拍出量(Cardiac Output)」である。


■ 心周期の流れ

① 心房収縮期

心房が収縮し、心室へ血液を送り込む。 拡張末期容積(EDV)が最大となる。

② 等容収縮期

房室弁が閉鎖し、圧上昇のみが起こる。 まだ大動脈弁は開かない。

③ 駆出期

大動脈弁が開き、血液が駆出される。 駆出量=1回拍出量(Stroke Volume)

④ 等容拡張期

半月弁が閉じ、圧が低下する。

⑤ 充満期

房室弁が開き、受動的に血液が流入する。


■ 心拍出量の定義

心拍出量(CO)= 心拍数(HR)× 1回拍出量(SV)

安静時:約5L/分 運動時:15〜25L/分以上


■ 1回拍出量を決める3因子

① 前負荷(Preload)

拡張末期容積に相当する。 フランク=スターリング機序により、 伸展が大きいほど収縮力が増す。

② 後負荷(Afterload)

血液を送り出す際の抵抗。 主に動脈圧に依存する。

③ 収縮力(Contractility)

心筋自体の収縮能。 交感神経刺激で増強。


■ 循環動態の統合

心拍出量は以下と密接に関連する:

  • 静脈還流量
  • 血管トーン(平滑筋)
  • 血液量
  • 自律神経活動

したがって心拍出量は「心臓単独の問題」ではない。


■ 東洋医学的関連

① 心主血脈の動的解釈

「心主血脈」は単なる循環の有無ではなく、 拍出量・リズム・血流分布を含む動的概念と捉えられる。

② 気と拍出量

心拍出量低下は「気虚」の臨床像と重なる。

  • 易疲労
  • 息切れ
  • 冷え
  • 集中力低下

③ 血虚と前負荷

循環血液量不足は前負荷低下を招く。 これは血虚の機能的側面と一致する。

④ 瘀血と後負荷

血管抵抗増大は後負荷上昇を意味する。 慢性血管収縮状態は瘀血概念と重なる。

⑤ 腎と循環血液量

腎は水液代謝を主る。 循環血液量調整(RAAS系)は腎機能と密接に関連する。


■ 鍼灸との関連

① 自律神経調整と心拍数制御

鍼刺激は迷走神経活動を高め、 安静時心拍数を適正化する。

② 末梢血管抵抗の調整

一酸化窒素(NO)放出促進により、 血管平滑筋弛緩が起こる。

→ 後負荷低減 → 心仕事量軽減

③ 静脈還流の改善

筋ポンプ作用促進や微小循環改善により、 前負荷が安定する。

④ ストレス緩和と収縮力安定

慢性ストレスは交感神経過剰を招く。 適切な鍼治療は過緊張を緩和し、 心機能の過負荷を軽減する。

⑤ 全身循環改善という視点

鍼灸は局所治療ではなく、

  • 心(ポンプ)
  • 血管(抵抗)
  • 血液量
  • 自律神経

を同時に調整する可能性がある。


■ まとめ

  • 心周期は機械的拍動の流れである
  • 心拍出量=心拍数×1回拍出量
  • 前負荷・後負荷・収縮力がSVを規定する
  • 循環は心・血管・血液・神経の統合系である
  • 東洋医学の気・血・腎概念と対応可能
  • 鍼灸は自律神経と血管調整を通じ循環に影響する

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