生理学 4-3 血圧調節

血圧とは、血液が血管壁に及ぼす圧力である。

平均血圧(Mean Arterial Pressure)は、血圧 = 心拍出量(CO) × 末梢血管抵抗(TPR)によって規定される。

したがって血圧は、

  • 心機能
  • 血管トーン
  • 循環血液量
  • 自律神経活動

の統合的結果である。


■ 短期的調節(秒〜分)

① 圧受容体反射(バロレセプター反射)

頸動脈洞・大動脈弓に存在する圧受容体が 血圧変化を感知する。

  • 血圧上昇 → 交感神経抑制
  • 血圧低下 → 交感神経亢進

延髄心血管中枢を介して即時調整が行われる。

② 交感神経作用

  • 心拍数増加
  • 収縮力増強
  • 血管収縮(α1受容体)

■ 中期的調節(時間単位)

① レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)

腎血流低下によりレニン分泌が増加。

  • アンジオテンシンII:強力な血管収縮
  • アルドステロン:Na・水再吸収増加

→ 循環血液量増加

② バソプレシン(ADH)

水再吸収を促進し、血液量を増加させる。


■ 長期的調節(慢性)

腎臓は体液量を調節することで、 長期的血圧を規定する。

塩分過多・腎機能低下は慢性高血圧の要因となる。


■ 血圧異常の機序

① 高血圧

  • 交感神経過活動
  • 血管平滑筋収縮持続
  • RAAS亢進
  • 血管リモデリング

② 低血圧

  • 拍出量低下
  • 血液量不足
  • 自律神経失調

■ 東洋医学的関連

① 肝陽上亢と高血圧

ストレスによる交感神経亢進は、 血管収縮・心拍数増加をもたらす。

これは肝陽上亢・肝火上炎の病態と重なる。

② 瘀血と血管抵抗

慢性血管収縮や血管壁硬化は、 瘀血概念と機能的に対応する。

③ 腎と水液代謝

腎は水を主る。 RAAS系による血液量調節は、 腎の水液代謝機能と直結する。

④ 気虚と低血圧

心拍出量低下や自律神経低活動は、 気虚の臨床像(易疲労・立ちくらみ)と重なる。

⑤ 寒邪と血管収縮

寒冷刺激は交感神経を介して血管収縮を起こす。 「寒則収引」は血圧上昇機序の一部と一致する。


■ 鍼灸との関連

① 交感神経抑制作用

鍼刺激は延髄心血管中枢に作用し、 交感神経活動を抑制する。

→ 血管拡張 → 心拍数低下 → 血圧安定

② 一酸化窒素(NO)放出

局所および全身性に血管拡張が促進される。 後負荷軽減が起こる。

③ RAAS系への影響

動物実験ではレニン活性低下が報告されている。 体液性高血圧に対する補助的調整が期待される。

④ ストレス性高血圧への対応

情動緊張緩和により、 心拍数・血管収縮の慢性亢進を是正する。

⑤ 低血圧へのアプローチ

気虚型低血圧では、 自律神経バランス調整により 過度な副交感優位を改善する可能性がある。


■ まとめ

  • 血圧=心拍出量×末梢血管抵抗
  • 短期調節は自律神経反射
  • 中長期調節はRAASと腎機能
  • 高血圧は神経・血管・体液の複合病態
  • 東洋医学の肝・腎・瘀血概念と対応可能
  • 鍼灸は自律神経・血管機能を通じ血圧に影響する

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