生理学 7-3 栄養素の吸収

■ 概要

栄養素の吸収とは、消化によって分解された物質が消化管上皮を通過して体内へ取り込まれる過程である。 主な吸収部位は小腸であり、絨毛(じゅうもう)と微絨毛によって吸収面積が大きく拡大している。 吸収された栄養素は、血液またはリンパ系を介して全身へ運ばれる。

栄養素の種類によって吸収経路は異なり、糖質やアミノ酸は主に門脈を通って肝臓へ運ばれ、 脂質はリンパ管(乳び管)を経由して体循環へ入る。


■ 小腸の構造と吸収面積

  • 輪状ヒダ(Kerckringヒダ)
  • 絨毛(villi)
  • 微絨毛(microvilli)

これらの構造によって小腸の吸収面積は大きく拡大し、効率的な栄養吸収が可能となる。


■ 栄養素の吸収機構

1. 糖質の吸収

  • 最終形:単糖(グルコース・ガラクトース・フルクトース)
  • 主な吸収部位:小腸
  • 吸収機構
    • グルコース・ガラクトース → Na共輸送
    • フルクトース → 促進拡散
  • 吸収後 → 門脈 → 肝臓

2. タンパク質の吸収

  • 最終形:アミノ酸・ジペプチド・トリペプチド
  • 主な吸収部位:小腸
  • 吸収機構:能動輸送
  • 吸収後 → 門脈 → 肝臓

3. 脂質の吸収

  • 最終形:脂肪酸・モノグリセリド
  • 胆汁酸によりミセル形成
  • 小腸上皮細胞で再合成 → トリグリセリド
  • カイロミクロン形成
  • 乳び管(リンパ管)へ移行
  • 胸管 → 静脈系へ

■ ビタミン・ミネラルの吸収

1. ビタミン

  • 脂溶性ビタミン(A・D・E・K) → 脂質とともに吸収
  • 水溶性ビタミン → 主に小腸で吸収
  • ビタミンB12 → 回腸で吸収(内因子必要)

2. ミネラル

  • 鉄 → 十二指腸
  • カルシウム → 小腸上部
  • ナトリウム → 小腸全体

■ 小腸部位別吸収(国家試験重要)

  • 十二指腸:鉄・カルシウム
  • 空腸:糖質・アミノ酸・脂質の大部分
  • 回腸:胆汁酸・ビタミンB12

■ 水分吸収

水は主に小腸と大腸で吸収される。 成人では1日に約8〜9Lの水分が消化管へ流入するが、その大部分が再吸収される。

  • 小腸:約7〜8L吸収
  • 大腸:約1〜2L吸収

■ 東洋医学的関連

東洋医学では栄養吸収は主に「脾」の運化作用として説明される。 脾は飲食物を消化し、そこから得られる精微物質(栄養)を全身へ輸送する働きを担う。 この概念は西洋医学における小腸での栄養吸収および門脈循環による栄養輸送と機能的に対応している。

脾の運化が正常であれば、食物から十分な栄養を取り出し、 気血を生成して全身の活動を支えることができる。 しかし脾虚になると、消化吸収機能が低下し、食欲不振、腹部膨満、軟便、倦怠感などが出現する。 これは小腸吸収機能の低下や消化酵素分泌低下と類似した状態と考えられる。

また東洋医学では小腸は「受盛之官」とされ、 胃で消化された食物を受け取り、清濁を分別する働きがあるとされる。 清とは栄養分であり、濁とは不要物である。 この概念は小腸で栄養を吸収し、残りが大腸へ送られるという西洋医学的理解と対応する。

さらに脂質吸収に関わる胆汁分泌は、東洋医学では肝胆の機能と関連づけられる。 肝の疏泄作用が正常であると胆汁分泌が円滑に行われ、脂肪の消化吸収が良好になると考えられる。


■ 鍼灸との関連

鍼灸刺激は自律神経系や消化管機能に影響を与え、 消化管血流や腸管運動を調整することで栄養吸収環境を改善する可能性がある。

特に以下の経穴は消化吸収機能調整に用いられる。

足三里刺激は消化管血流増加、胃腸運動調整、 消化管ホルモン分泌調整などが報告されており、 消化吸収機能の改善に広く用いられる。

慢性的な消化吸収障害では、 脾虚を基本病態として補脾益気を目的とした治療が行われる。 この場合、足三里脾兪中脘などを中心とした治療が選択される。

またストレスによる消化機能低下では、 肝気鬱結が関与すると考えられ、 太衝内関などを併用して自律神経調整を図ることも多い。

このように栄養吸収は西洋医学では小腸の生理機能として説明されるが、 東洋医学では脾の運化作用および小腸の清濁分別として理解される。 鍼灸治療は自律神経や消化管機能を調整することで、 栄養吸収環境の改善に寄与する可能性がある。

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