病理学 8-4 発がん

発がんとは

発がんとは、 正常細胞が遺伝子異常を蓄積し、制御不能な増殖能を獲得して腫瘍化する過程を指します。

単一の原因ではなく、 多段階・多因子による進行性プロセスである点が重要です。


発がんの基本過程(多段階発がん)

① イニシエーション(開始)

DNAに不可逆的な損傷(突然変異)が生じる段階です。

  • 発がん物質(化学物質)
  • 放射線
  • ウイルス

などにより、 遺伝子の変異が固定されます。

② プロモーション(促進)

変異細胞が増殖する段階です。

この段階は可逆的であり、

などが関与します。

③ プログレッション(進展)

さらに遺伝子異常が蓄積し、

  • 浸潤
  • 転移
  • 悪性度の増加

が起こる段階です。


発がんに関わる遺伝子異常

がん遺伝子(oncogene)

細胞増殖を促進する遺伝子が異常活性化したものです。

アクセルが踏みっぱなしの状態に相当します。

腫瘍抑制遺伝子(tumor suppressor gene)

細胞増殖を抑制する遺伝子です。

これが失われることで、 増殖のブレーキが効かなくなります。

DNA修復機構の異常

損傷したDNAを修復する機構が破綻すると、 突然変異が蓄積しやすくなります。


発がんを促進する要因

慢性炎症

持続的な炎症は、 活性酸素を産生しDNA損傷を引き起こします。

また、 細胞増殖の繰り返しにより変異が蓄積します。

活性酸素(酸化ストレス)

細胞膜・タンパク・DNAを障害し、 発がんの重要因子となります。

生活習慣

  • 喫煙
  • 過度の飲酒
  • 高脂肪食
  • 運動不足

これらは慢性炎症・酸化ストレスを増大させます。

感染

ウイルスや細菌感染は、 発がんに関与することがあります。

免疫低下

通常、 異常細胞は免疫によって排除されますが、

免疫機能が低下すると、 がん細胞が生き残りやすくなります。


がんの成立(まとめ)

発がんは、

「遺伝子異常」+「慢性炎症」+「免疫低下」+「環境因子」

が重なり合うことで成立します。


東洋医学的関連

発がんは、 「正気の低下」と「病邪の停滞」が長期的に重なった結果として理解されます。

正気虚(気虚・腎虚)

免疫低下・修復力低下は、 正気虚に相当します。

特に腎は、 生命力・再生能力と関係し、 発がんの基盤となります。

気滞

ストレスや情緒不安により、 気の巡りが滞る状態です。

長期化すると、 組織の機能低下を招きます。

瘀血

血流の停滞は、 局所の低酸素状態や代謝異常を引き起こし、 発がん環境を形成します。

痰湿

代謝異常により生じた不要物が蓄積し、 腫瘍形成の基盤となります。

熱毒(慢性炎症)

持続する炎症は、 東洋医学では「熱毒」として捉えられます。

これは発がん促進因子に相当します。

すなわち、

「正気虚を背景に、気滞→瘀血→痰湿→熱毒が連鎖して発がんに至る」

と整理できます。


鍼灸との関連

発がん予防および再発予防の観点で、 鍼灸は重要な役割を担います。

免疫機能の調整

鍼刺激は、 免疫系のバランスを整え、 異常細胞の排除機能をサポートします。

慢性炎症の抑制

炎症反応の調整により、 発がん促進環境を抑制する可能性があります。

自律神経の調整

ストレスは発がんの重要因子であり、鍼灸は交感神経過緊張を緩和し、 内的環境の安定化に寄与します。

血流改善(瘀血の改善)

局所・全身の循環を改善し、 低酸素・代謝異常を軽減します。

体質改善(未病治)

東洋医学では、

を通じて、 発がん体質の改善を図ります。

臨床的意義

鍼灸は、

  • 発がん予防
  • 再発予防
  • 治療中の体調維持

において、 補助療法として有用です。

ただし、 悪性腫瘍の治療は必ず医療機関と連携し、 西洋医学的治療を優先する必要があります。


まとめ

  • 発がんは多段階・多因子によるプロセスである
  • 遺伝子異常の蓄積が本質である
  • 慢性炎症・酸化ストレス・免疫低下が重要因子である
  • 東洋医学では正気虚と痰・瘀血・気滞・熱毒の複合病態と捉える
  • 鍼灸は予防・再発防止・体質改善に寄与する

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