■ 定義
うつ病とは、 気分の落ち込みや意欲の低下を中心とした精神疾患である。 一時的な気分の落ち込みとは異なり、 日常生活や社会生活に支障をきたす状態が2週間以上続くことが特徴である。 身体症状を伴うことも多く、 「こころ」と「からだ」の両方に影響を及ぼす。
■ 原因・危険因子
- 強いストレス
- 喪失体験(死別・離別など)
- 過労・睡眠不足
- 遺伝的要因
- 脳内神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン・ドパミン)の機能異常
- 慢性疾患
- 産後や更年期などのホルモン変化
■ 病態
脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることに加え、 ストレスや遺伝的素因が複雑に関与して発症すると考えられている。 自律神経や内分泌機能にも影響を及ぼし、 精神症状だけでなく身体症状も現れる。
■ 主な症状
● 精神症状
- 抑うつ気分
- 興味・喜びの喪失
- 意欲低下
- 集中力低下
- 自己評価の低下
- 罪悪感
- 悲観的思考
● 身体症状
- 不眠・過眠
- 食欲低下・食欲亢進
- 体重減少・増加
- 全身倦怠感
- 頭痛
- 肩こり
- 便秘
- 動悸
■ 合併しやすい疾患
- 不安障害
- パニック障害
- 睡眠障害
- アルコール依存症
- 生活習慣病
■ 検査・診断
- 問診(DSM-5・ICD診断基準など)
- 心理検査
- 血液検査(身体疾患の除外)
- 甲状腺機能などの評価
■ 西洋医学的治療
● 薬物療法
- SSRI
- SNRI
- NaSSA
- 三環系・四環系抗うつ薬
● 精神療法
- 認知行動療法(CBT)
- 対人関係療法
- 心理教育
● 生活療法
- 十分な休養
- 睡眠リズムの改善
- ストレスマネジメント
- 適度な運動
■ 予防
- 十分な睡眠
- 規則正しい生活
- ストレスの適切な発散
- 相談できる環境を持つ
- 無理を続けない
■ 東洋医学的解釈
● 基本病態
● 証別分類
■ 鍼灸アプローチ
● 基本方針
- 自律神経の調整
- 精神的緊張の緩和
- 睡眠の質の改善
- 気血の巡りを整える
- QOL向上
● 主要経穴
● 配穴例
● 手技
- 穏やかな軽刺激を基本とする
- 安心できる施術環境を整える
- 疲労度や精神状態に合わせて刺激量を調整する
■ 鍼灸適応と注意点
● 適応
- 軽度~中等度の抑うつ症状の補助療法
- 睡眠障害
- 肩こり・頭痛など身体症状
- 慢性疲労
- ストレス関連症状
● 注意(レッドフラッグ)
- 自殺念慮・希死念慮
- 自傷行為
- 著しい食事摂取不能
- 極端な不眠が続く
- 急激な症状悪化
- 幻覚・妄想など精神病症状
※自殺念慮や著しい症状悪化がみられる場合は、速やかに精神科・心療内科での診察を優先する。鍼灸は薬物療法や精神療法を補完する目的で行い、単独治療として用いるべきではない。
■ ポイント
- 抑うつ気分または興味・喜びの喪失が中心症状である。
- 症状が2週間以上持続し、日常生活に支障をきたすことが診断の重要な目安である。
- 身体症状(不眠・食欲低下・倦怠感など)を伴うことが多い。
- 治療の基本は休養・薬物療法・精神療法である。
- SSRI・SNRIは代表的な抗うつ薬である。
- 双極性障害との鑑別が重要である。
- 自殺リスクの評価は最優先事項である。
■ まとめ
うつ病は、 抑うつ気分や意欲低下を中心とする精神疾患であり、 精神症状だけでなく睡眠障害や倦怠感などの身体症状も伴うことが多い。 治療は十分な休養を基本とし、 薬物療法や精神療法を組み合わせて行われる。 鍼灸は自律神経の調整や睡眠の改善、 身体症状の緩和やQOL向上を目的とした補助療法として活用されるが、 重症例では精神科・心療内科での専門的治療を優先する。

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