生理学 1-5 膜電位と活動電位

■ 概要

膜電位とは、細胞膜を挟んで生じる電位差である。 特に神経細胞や筋細胞では、この電気的性質が情報伝達や収縮の基盤となる。

膜電位はイオンの濃度差と細胞膜の選択的透過性によって生じ、 刺激により急激な電位変化(活動電位)が発生する。


■ 静止膜電位

刺激がない状態での膜電位を静止膜電位という。 神経細胞では約 −70mVである。

  • 細胞内:K⁺が多い
  • 細胞外:Na⁺が多い
  • Na⁺/K⁺ポンプが濃度差を維持

細胞膜はK⁺に対する透過性が高いため、細胞内が負に帯電する。


■ 活動電位の発生機構

十分な刺激が加わると、閾値を超えて活動電位が発生する。

段階 主な変化
脱分極 電位依存性Na⁺チャネル開口、Na⁺流入
再分極 K⁺チャネル開口、K⁺流出
過分極 K⁺流出が一時的に持続

活動電位は「全か無かの法則」に従い、一定の振幅で伝導する。


■ 不応期

活動電位発生後、一定期間は再び興奮しにくい状態となる。

  • 絶対不応期:いかなる刺激でも興奮しない
  • 相対不応期:強い刺激であれば興奮可能

不応期は神経興奮の一方向性伝導を保証する。


■ 興奮伝導

神経線維では活動電位が軸索を伝導する。 有髄神経ではランビエ絞輪を介した跳躍伝導が起こり、 伝導速度が大幅に速くなる。

神経線維の太さや髄鞘の有無は伝導速度に影響する。


■ 異常と病態

  • 高カリウム血症 → 膜電位変化
  • 低カルシウム血症 → 神経過興奮
  • 不整脈 → 心筋活動電位異常

膜電位の変化は神経・筋・心臓機能に直結する。


■ 東洋医学的視点

東洋医学では神経電位という概念は存在しないが、 刺激の伝導や反応性は「気の流れ」として表現される。

興奮性の亢進は「実」、低下は「虚」として理解されることがある。

電気的現象としての膜電位は、 気血の円滑な流通という抽象概念と重ねて考えることができる。


■ 鍼灸との関連

鍼刺激は機械的刺激であるが、結果として求心性神経の活動電位を発生させる。

  • Aδ線維・C線維の活性化
  • 脊髄後角での伝達調節
  • 中枢神経系への入力

この神経興奮が、自律神経調節や内因性オピオイド放出を誘導すると考えられている。

すなわち、鍼治療の第一段階は活動電位の発生である。


■ まとめ

膜電位はイオン濃度差と膜透過性により生じる。 刺激により活動電位が発生し、神経や筋の機能を担う。

活動電位は全か無かの法則と不応期を特徴とし、 生体情報伝達の基盤となる。

鍼灸は神経活動電位を介して生体反応を引き起こす治療法と理解できる。

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