生理学 1-6 シグナル伝達と受容体

■ 概要

生体内では、細胞同士が常に情報をやり取りしている。 この情報伝達の仕組みをシグナル伝達という。

ホルモン・神経伝達物質・サイトカインなどの化学物質が受容体に結合し、 細胞内で一連の反応を引き起こすことで、生理機能が調節される。


■ 受容体の種類

受容体は存在部位と作用機序により分類される。

分類 特徴
膜受容体 細胞膜上に存在、即時反応 自律神経受容体
イオンチャネル型 リガンド結合でチャネル開口 ニコチン性ACh受容体
Gタンパク質共役型 セカンドメッセンジャー活性化 アドレナリン受容体
核内受容体 遺伝子発現を調節 ステロイドホルモン受容体

■ セカンドメッセンジャー

Gタンパク質共役型受容体では、細胞内情報伝達物質が働く。

  • cAMP
  • IP₃
  • DAG
  • Ca²⁺

これらは酵素活性やイオン濃度を変化させ、生理反応を誘導する。


■ シグナル伝達の特徴

  • 特異性(特定の受容体にのみ作用)
  • 増幅作用(少量の刺激が大きな反応を生む)
  • 調節性(感受性の変化:アップレギュレーション/ダウンレギュレーション)

慢性的な刺激は受容体数や感受性を変化させる。


■ 情報伝達の様式

  • 内分泌(血流を介する)
  • 傍分泌(局所拡散)
  • 自己分泌
  • 神経伝達(シナプス)

これらは生体の統合的調節を支える基本様式である。


■ 異常と病態

  • 受容体異常症
  • ホルモン抵抗性
  • 自己免疫疾患(受容体抗体)

シグナル伝達の異常は、内分泌疾患や神経疾患の原因となる。


■ 東洋医学的視点

東洋医学では情報伝達という概念は存在しないが、 「気」の伝導や経絡の反応として表現される。

刺激に対する反応性は体質や虚実によって異なるとされ、 これは受容体感受性の違いと類比できる。

同じ刺激でも反応が異なるという視点は、 現代医学における受容体調節の概念と共通する部分がある。


■ 鍼灸との関連

鍼刺激は局所でATPやアデノシンを放出させ、 受容体を介したシグナル伝達を誘導する。

  • アデノシン受容体活性化
  • オピオイド受容体活性化
  • 自律神経受容体調節

これらの作用により鎮痛・血流改善・抗炎症効果が発現すると考えられる。

すなわち、鍼治療は受容体を介した生理的シグナル調節である。


■ まとめ

シグナル伝達は受容体を介して行われる細胞間情報交換機構である。 膜受容体・核内受容体などがあり、セカンドメッセンジャーを介して反応が増幅される。

受容体の異常は多くの疾患の原因となる。

鍼灸は受容体レベルの調節を通じて、 生体反応を制御する可能性がある。

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