生理学 8-3 水・電解質バランス

■ 概要

人体の約60%は水分で構成されており、体液は生命維持に不可欠な環境を形成している。 体内の水分量や電解質濃度は常に一定範囲に保たれており、 これを水・電解質バランスという。

この調節には主に以下の器官・機構が関与する。

  • 腎臓
  • 視床下部
  • 下垂体
  • 副腎

これらが連携することで、体液量・浸透圧・電解質濃度が維持される。


■ 体液区分

体内の水分は大きく細胞内液細胞外液に分けられる。

  • 細胞内液:約40%(体重比)
  • 細胞外液:約20%(体重比)

細胞外液はさらに以下に分類される。

  • 血漿
  • 間質液

体液区分ごとに主要電解質が異なる。


■ 主な電解質

細胞外液の主要電解質

  • ナトリウム(Na⁺)
  • 塩化物イオン(Cl⁻)
  • 重炭酸イオン(HCO₃⁻)

細胞内液の主要電解質

  • カリウム(K⁺)
  • リン酸イオン
  • タンパク質

これらの電解質は神経・筋機能や浸透圧維持に重要である。


■ 浸透圧

浸透圧とは、半透膜を隔てた溶液間で水を移動させる圧力である。

体液浸透圧は主にナトリウム濃度によって決まる。

  • 正常血漿浸透圧:約285 mOsm/L

浸透圧が変化すると水は濃度の低い側から高い側へ移動する。


■ 水分調節機構

口渇中枢

視床下部の口渇中枢は体液浸透圧の上昇を感知し、 水分摂取を促す。

抗利尿ホルモン(ADH)

ADHは下垂体後葉から分泌され、 集合管で水再吸収を促進する。

  • ADH増加 → 水再吸収増加 → 尿濃縮
  • ADH減少 → 水再吸収減少 → 希釈尿

■ ナトリウム調節

ナトリウムは細胞外液量の調節に重要である。

アルドステロン

  • Na再吸収促進
  • 水再吸収増加
  • K排泄促進

アルドステロンは副腎皮質から分泌される。


■ レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系

血圧低下や腎血流低下が起こると、 腎臓からレニンが分泌される。

これにより

  • アンジオテンシンⅡ生成
  • 血管収縮
  • アルドステロン分泌

が起こり、体液量と血圧が上昇する。


■ 臨床的意義

  • 脱水
  • 浮腫
  • 低ナトリウム血症
  • 高ナトリウム血症
  • 高カリウム血症

水・電解質異常は神経機能や循環機能に重大な影響を与える。


■ 東洋医学的関連

津液(しんえき)の概念

東洋医学では体液を津液と呼び、 全身を潤し栄養する重要な物質とされている。

津液には

  • 血液
  • リンパ液
  • 組織液
  • 唾液

などが含まれると考えられる。

津液代謝は主に

の三臓によって調節される。

肺・脾・腎による水液代謝

  • 水分を全身に散布する(宣発作用)

  • 水分を運搬・吸収する(運化作用)

  • 水分排泄を調節する(気化作用)

この三臓のバランスにより体液代謝が維持される。

水湿・痰飲

水分代謝が障害されると、 体内に水分が停滞する。

東洋医学ではこれを

  • 水湿
  • 痰飲
  • 浮腫

などとして理解する。

これらは現代医学でいう体液過剰や浮腫と関連すると考えられる。


■ 鍼灸との関連

自律神経と体液調節

水・電解質バランスは

  • 自律神経
  • 内分泌
  • 腎機能

によって調節される。

鍼刺激は自律神経系に作用し、 体液調節機構に影響を与える可能性がある。

浮腫への治療

浮腫は水液代謝異常として理解され、 鍼灸治療の適応となることが多い。

代表的な経穴には以下がある。

これらの経穴は利水作用や水分代謝改善を目的として使用される。

脱水・津液不足

体液不足は東洋医学では津液不足として理解される。

この場合には

などが用いられ、 体液生成や全身状態の改善を図る。

全身調整

水分代謝は単一の臓器ではなく、 全身の機能バランスによって維持される。

鍼灸治療では

の経絡を調整し、 津液循環の正常化を目指す。


■ まとめ

水・電解質バランスは腎臓・ホルモン・神経系の協調によって維持される。

特にナトリウムと水分調節は体液量と浸透圧維持に重要である。

東洋医学では体液は津液として理解され、 肺・脾・腎の協調によって水液代謝が調節されると考えられている。

鍼灸治療は水液代謝の調整や浮腫・脱水などの改善に応用される。

0 件のコメント:

コメントを投稿