生理学 2-1 ニューロンの構造と機能

■ 概要

ニューロン(神経細胞)は、情報の受容・統合・伝達を担う細胞である。 神経系はこのニューロンを基本単位として構成され、生体の迅速な調節機構を形成している。

ニューロンは電気的興奮性を持ち、活動電位を発生・伝導することで情報を伝える。


■ ニューロンの基本構造

ニューロンは以下の3つの主要構造からなる。

  • 樹状突起
  • 細胞体
  • 軸索
構造 主な役割
樹状突起 刺激の受容
細胞体 情報の統合
軸索 活動電位の伝導

軸索の末端はシナプスを形成し、次の細胞へ情報を伝える。


■ ニューロンの分類

機能により以下のように分類される。

  • 感覚神経(求心性)
  • 運動神経(遠心性)
  • 介在神経(中間ニューロン)

構造的には単極性・双極性・多極性ニューロンに分けられる。


■ 有髄神経と無髄神経

軸索は髄鞘で覆われることがある。

  • 有髄神経:跳躍伝導、伝導速度が速い
  • 無髄神経:連続伝導、伝導速度が遅い

髄鞘は中枢ではオリゴデンドロサイト、末梢ではシュワン細胞が形成する。


■ グリア細胞

神経系にはニューロン以外に支持細胞(グリア)が存在する。

  • アストロサイト
  • オリゴデンドロサイト
  • ミクログリア
  • シュワン細胞

グリアは栄養供給、絶縁、免疫機能などを担う。


■ ニューロンの機能的特徴

  • 興奮性
  • 伝導性
  • 可塑性(シナプス強度変化)

神経可塑性は学習や記憶の基盤である。


■ 異常と病態

  • 脱髄疾患
  • ニューロパチー
  • 神経変性疾患

ニューロンの構造・機能障害は感覚異常や運動麻痺を引き起こす。


■ 東洋医学的視点

東洋医学では神経細胞という概念はないが、 感覚や運動の伝達は「経絡」や「気の流れ」として説明される。

しびれや疼痛は気血の停滞とされることが多く、 これは神経伝導異常と対比できる。

経絡上の反応点は、神経・血管が豊富な部位と一致することがある。


■ 鍼灸との関連

鍼刺激は主に末梢神経終末を介して求心性ニューロンを活性化する。

  • Aδ線維刺激 → 鎮痛反応
  • C線維刺激 → 自律神経反応
  • 脊髄レベルでのゲート制御

これらの入力は中枢神経系で統合され、 内因性オピオイド放出や自律神経調整を引き起こす。

したがって、鍼治療はニューロンの興奮と可塑性を利用した介入である。


■ まとめ

ニューロンは情報の受容・統合・伝達を担う神経細胞である。 樹状突起・細胞体・軸索から構成され、活動電位により情報を伝える。

グリア細胞は神経機能を支持し、神経可塑性は学習や適応に関与する。

鍼灸は末梢ニューロンを刺激し、 中枢を介した調節反応を引き起こす治療法と理解できる。

生理学 1-6 シグナル伝達と受容体

■ 概要

生体内では、細胞同士が常に情報をやり取りしている。 この情報伝達の仕組みをシグナル伝達という。

ホルモン・神経伝達物質・サイトカインなどの化学物質が受容体に結合し、 細胞内で一連の反応を引き起こすことで、生理機能が調節される。


■ 受容体の種類

受容体は存在部位と作用機序により分類される。

分類 特徴
膜受容体 細胞膜上に存在、即時反応 自律神経受容体
イオンチャネル型 リガンド結合でチャネル開口 ニコチン性ACh受容体
Gタンパク質共役型 セカンドメッセンジャー活性化 アドレナリン受容体
核内受容体 遺伝子発現を調節 ステロイドホルモン受容体

■ セカンドメッセンジャー

Gタンパク質共役型受容体では、細胞内情報伝達物質が働く。

  • cAMP
  • IP₃
  • DAG
  • Ca²⁺

これらは酵素活性やイオン濃度を変化させ、生理反応を誘導する。


■ シグナル伝達の特徴

  • 特異性(特定の受容体にのみ作用)
  • 増幅作用(少量の刺激が大きな反応を生む)
  • 調節性(感受性の変化:アップレギュレーション/ダウンレギュレーション)

慢性的な刺激は受容体数や感受性を変化させる。


■ 情報伝達の様式

  • 内分泌(血流を介する)
  • 傍分泌(局所拡散)
  • 自己分泌
  • 神経伝達(シナプス)

これらは生体の統合的調節を支える基本様式である。


■ 異常と病態

  • 受容体異常症
  • ホルモン抵抗性
  • 自己免疫疾患(受容体抗体)

シグナル伝達の異常は、内分泌疾患や神経疾患の原因となる。


■ 東洋医学的視点

東洋医学では情報伝達という概念は存在しないが、 「気」の伝導や経絡の反応として表現される。

刺激に対する反応性は体質や虚実によって異なるとされ、 これは受容体感受性の違いと類比できる。

同じ刺激でも反応が異なるという視点は、 現代医学における受容体調節の概念と共通する部分がある。


■ 鍼灸との関連

鍼刺激は局所でATPやアデノシンを放出させ、 受容体を介したシグナル伝達を誘導する。

  • アデノシン受容体活性化
  • オピオイド受容体活性化
  • 自律神経受容体調節

これらの作用により鎮痛・血流改善・抗炎症効果が発現すると考えられる。

すなわち、鍼治療は受容体を介した生理的シグナル調節である。


■ まとめ

シグナル伝達は受容体を介して行われる細胞間情報交換機構である。 膜受容体・核内受容体などがあり、セカンドメッセンジャーを介して反応が増幅される。

受容体の異常は多くの疾患の原因となる。

鍼灸は受容体レベルの調節を通じて、 生体反応を制御する可能性がある。

生理学 1-5 膜電位と活動電位

■ 概要

膜電位とは、細胞膜を挟んで生じる電位差である。 特に神経細胞や筋細胞では、この電気的性質が情報伝達や収縮の基盤となる。

膜電位はイオンの濃度差と細胞膜の選択的透過性によって生じ、 刺激により急激な電位変化(活動電位)が発生する。


■ 静止膜電位

刺激がない状態での膜電位を静止膜電位という。 神経細胞では約 −70mVである。

  • 細胞内:K⁺が多い
  • 細胞外:Na⁺が多い
  • Na⁺/K⁺ポンプが濃度差を維持

細胞膜はK⁺に対する透過性が高いため、細胞内が負に帯電する。


■ 活動電位の発生機構

十分な刺激が加わると、閾値を超えて活動電位が発生する。

段階 主な変化
脱分極 電位依存性Na⁺チャネル開口、Na⁺流入
再分極 K⁺チャネル開口、K⁺流出
過分極 K⁺流出が一時的に持続

活動電位は「全か無かの法則」に従い、一定の振幅で伝導する。


■ 不応期

活動電位発生後、一定期間は再び興奮しにくい状態となる。

  • 絶対不応期:いかなる刺激でも興奮しない
  • 相対不応期:強い刺激であれば興奮可能

不応期は神経興奮の一方向性伝導を保証する。


■ 興奮伝導

神経線維では活動電位が軸索を伝導する。 有髄神経ではランビエ絞輪を介した跳躍伝導が起こり、 伝導速度が大幅に速くなる。

神経線維の太さや髄鞘の有無は伝導速度に影響する。


■ 異常と病態

  • 高カリウム血症 → 膜電位変化
  • 低カルシウム血症 → 神経過興奮
  • 不整脈 → 心筋活動電位異常

膜電位の変化は神経・筋・心臓機能に直結する。


■ 東洋医学的視点

東洋医学では神経電位という概念は存在しないが、 刺激の伝導や反応性は「気の流れ」として表現される。

興奮性の亢進は「実」、低下は「虚」として理解されることがある。

電気的現象としての膜電位は、 気血の円滑な流通という抽象概念と重ねて考えることができる。


■ 鍼灸との関連

鍼刺激は機械的刺激であるが、結果として求心性神経の活動電位を発生させる。

  • Aδ線維・C線維の活性化
  • 脊髄後角での伝達調節
  • 中枢神経系への入力

この神経興奮が、自律神経調節や内因性オピオイド放出を誘導すると考えられている。

すなわち、鍼治療の第一段階は活動電位の発生である。


■ まとめ

膜電位はイオン濃度差と膜透過性により生じる。 刺激により活動電位が発生し、神経や筋の機能を担う。

活動電位は全か無かの法則と不応期を特徴とし、 生体情報伝達の基盤となる。

鍼灸は神経活動電位を介して生体反応を引き起こす治療法と理解できる。

生理学 1-4 細胞膜輸送(拡散・能動輸送・浸透)

■ 概要

細胞は外界および内部環境との間で、常に物質の出入りを行っている。 この物質移動は細胞膜を介して行われ、生命維持に不可欠な機構である。

細胞膜輸送は、エネルギー消費の有無により「受動輸送」と「能動輸送」に大別される。


■ 受動輸送

受動輸送はATPを必要とせず、濃度勾配に従って物質が移動する。

  • 単純拡散
  • 促進拡散
  • 浸透
種類 特徴
単純拡散 脂溶性物質が膜を直接通過
促進拡散 チャネル・担体タンパク質を介する
浸透 水が半透膜を通して移動

浸透圧は体液バランス維持に重要である。


■ 能動輸送

能動輸送はATPを消費し、濃度勾配に逆らって物質を移動させる。

  • 一次能動輸送(Na⁺/K⁺ポンプなど)
  • 二次能動輸送(共輸送・対向輸送)

Na⁺/K⁺ポンプは、細胞外にNa⁺を排出し、細胞内にK⁺を取り込むことで、 イオン濃度差と静止膜電位を維持している。


■ 小胞輸送

大きな分子は膜の陥入や融合によって輸送される。

  • エンドサイトーシス
  • エキソサイトーシス

神経伝達物質の放出はエキソサイトーシスによって行われる。


■ 浸透圧と張度

細胞外液の浸透圧が変化すると、細胞は以下の反応を示す。

  • 高張液:細胞縮小
  • 低張液:細胞膨張
  • 等張液:変化なし

臨床では点滴液の選択に重要な概念である。


■ 輸送異常と病態

  • チャネル異常症(チャネルパチー)
  • 浮腫(浸透圧異常)
  • 脱水
  • 電解質異常

細胞膜輸送の障害は、神経・筋の興奮性異常や循環障害を引き起こす。


■ 東洋医学的視点

細胞膜輸送そのものの概念は東洋医学には存在しないが、 水分代謝や気の出入りの調整という考え方がある。

  • 水滞 → 体液移動の停滞
  • 気機不暢 → 物質循環の障害

物質の円滑な出入りは、東洋医学的には「通じる」状態として表現される。


■ 鍼灸との関連

鍼刺激は機械的刺激により細胞膜の機械受容チャネルを活性化する。

  • イオンチャネルの開口
  • 細胞内Ca²⁺濃度変化
  • ATP放出

これらは細胞膜輸送の変化を介して生理反応を誘導する。

また、局所循環改善により浸透圧バランスが調整され、 浮腫や硬結の軽減につながると考えられる。


■ まとめ

細胞膜輸送は受動輸送・能動輸送・小胞輸送に分類される。 Na⁺/K⁺ポンプや浸透圧調節は生体機能の基盤である。

輸送異常は神経・筋・循環系の障害を引き起こす。

鍼灸は細胞膜レベルの反応を通じて、 生体調節機構に影響を与える可能性がある。

生理学 1-3 細胞の構造と機能

■ 概要

細胞は生体の構造的・機能的最小単位である。 人体は約37兆個の細胞から構成され、それぞれが特定の役割を担いながら全体として統合された機能を発揮している。

細胞の構造と機能を理解することは、生理学・病理学のすべての基礎となる。


■ 細胞の基本構造

細胞は大きく以下の3要素から構成される。

  • 細胞膜
  • 細胞質
構造 主な機能
細胞膜 物質の出入りの調節、情報受容
細胞質 代謝反応の場
DNAの保持、遺伝情報の制御

■ 細胞膜の特徴

細胞膜はリン脂質二重層からなり、流動モザイクモデルで説明される。

  • 選択的透過性
  • 受容体の存在
  • イオンチャネルの開閉

膜の電位差(静止膜電位)は神経・筋の興奮性の基盤となる。


■ 細胞小器官の機能

小器官 機能
ミトコンドリア ATP産生(エネルギー代謝)
粗面小胞体 タンパク質合成
滑面小胞体 脂質合成・Ca²⁺貯蔵
ゴルジ装置 タンパク質修飾・分泌
リソソーム 細胞内消化

細胞はこれらの小器官が協調することで生命活動を維持している。


■ 細胞の主な機能

  • 代謝(異化・同化)
  • 増殖(細胞分裂)
  • 分化
  • 情報伝達
  • アポトーシス(計画的細胞死)

細胞機能の破綻は、炎症・腫瘍・変性などの病態へとつながる。


■ 細胞間コミュニケーション

細胞は単独で存在するのではなく、化学物質や受容体を介して情報を交換している。

  • 内分泌(ホルモン)
  • 傍分泌
  • 自己分泌
  • 神経伝達

生体の統合的調節は、この細胞間情報伝達により成立している。


■ 東洋医学的視点

東洋医学には「細胞」という概念は存在しないが、 生命活動の最小単位を「気」の動きとして捉える思想がある。

気血水の循環が円滑であることは、細胞レベルで見れば、 十分な酸素供給・栄養供給・老廃物排出が保たれている状態と解釈できる。

細胞機能の低下は、東洋医学では「虚」や「瘀」として表現されることがある。


■ 鍼灸との関連

鍼刺激は、機械的刺激として細胞膜受容体や機械受容チャネルを活性化する。

  • ATP放出の促進
  • サイトカイン産生の調整
  • 局所血流増加
  • 線維芽細胞の活性化

これらは細胞レベルでの反応であり、 組織修復や疼痛緩和に関与すると考えられている。

すなわち、鍼刺激は細胞の応答性を利用した生理学的介入である。


■ まとめ

細胞は生体の最小単位であり、細胞膜・細胞質・核から構成される。 小器官が協調して代謝・増殖・情報伝達を行い、生命活動を支えている。

細胞機能の破綻は病態形成の出発点となる。

鍼灸は細胞レベルの応答を誘導し、 組織機能の回復に寄与する可能性がある。

生理学 1-2 内部環境と体液区分

■ 概要

内部環境とは、細胞を取り巻く体液環境を指す概念である。 19世紀にクロード・ベルナールが提唱し、生体の恒常性維持の中心的概念となった。

人体は約60%が水分で構成されており、その水分は一定の区画(コンパートメント)に分かれて存在する。 この体液区分の理解は、循環・呼吸・腎機能・電解質異常の理解の基礎となる。


■ 体液の全体像

成人の体液は大きく「細胞内液」と「細胞外液」に分けられる。

区分 体重比 特徴
細胞内液(ICF) 約40% 細胞内の液体
細胞外液(ECF) 約20% 細胞外に存在

※成人男性(体重60kg)の場合、総体液量は約36Lとなる。


■ 細胞外液の内訳

細胞外液はさらに以下に分類される。

区分 体重比 役割
血漿 約5% 血管内の液体成分
間質液 約15% 細胞と毛細血管の間
リンパ液 微量 組織液の回収

内部環境とは主にこの「細胞外液」を指す。 細胞は直接血液と接しているのではなく、間質液を介して物質交換を行っている。


■ 電解質組成の違い

細胞内液と細胞外液では、主要イオンが異なる。

主要陽イオン 主要陰イオン
細胞内液 K⁺ リン酸イオン・タンパク質
細胞外液 Na⁺ Cl⁻

この濃度差は、細胞膜のNa⁺/K⁺ポンプによって維持され、 膜電位や神経・筋の興奮性の基盤となる。


■ 体液移動の原理

体液は以下の物理的原理によって移動する。

  • 拡散
  • 浸透
  • 静水圧
  • 膠質浸透圧

毛細血管では、静水圧と膠質浸透圧のバランスにより、 濾過と再吸収が行われる(スターリングの法則)。


■ 体液異常と病態

  • 脱水(細胞外液減少)
  • 浮腫(間質液増加)
  • 低ナトリウム血症
  • 高カリウム血症

体液バランスの破綻は、循環不全や意識障害など重篤な状態につながる。


■ 東洋医学的視点

東洋医学では、体液は「津液(しんえき)」として捉えられる。

  • 津:さらさらした体液(唾液・汗など)
  • 液:濃厚な体液(関節液・髄など)

水滞(すいたい)や痰飲は、体液代謝異常の概念に相当する。

現代医学的な体液区分と、東洋医学的な津液代謝は、 理論体系は異なるが「体内の水分循環」という共通テーマを持つ。


■ 鍼灸との関連

鍼刺激は局所血流を増加させ、毛細血管透過性やリンパ循環に影響を与えることが報告されている。

  • 浮腫の軽減
  • 筋硬結部の血流改善
  • 自律神経を介した腎血流調節

これらは体液バランスの調整という観点から説明可能である。

特に慢性疼痛では、局所循環障害と間質液停滞が関与することがあり、 鍼治療はその微小循環改善を通じて作用すると考えられる。


■ まとめ

体液は細胞内液と細胞外液に区分され、内部環境は主に細胞外液を指す。 電解質組成の差は生体機能の基盤であり、体液移動は物理法則に従って行われる。

体液バランスの破綻は浮腫や脱水などの病態を生む。

鍼灸は局所循環や自律神経調節を通じて、 体液環境の安定化に寄与する可能性がある。

生理学 1-1 生体の恒常性(ホメオスタシス)

■ 概要

生体の恒常性(homeostasis)とは、外部環境が変化しても体内環境を一定に保とうとする生体の調節機構である。 この概念は、19世紀にクロード・ベルナールが「内部環境(milieu intérieur)」として提唱し、 その後ウォルター・キャノンが「ホメオスタシス」という名称を用いて体系化した。

人体は、体温・血圧・血糖値・pH・浸透圧などを狭い範囲に維持することで、細胞が最適に機能できる状態を保っている。


■ 恒常性の基本構造(フィードバック機構)

恒常性は主に「負のフィードバック」によって維持される。

  • ① 変化の検出(受容器)
  • ② 中枢での統合(統合中枢)
  • ③ 効果器による応答(筋・腺など)

例:体温上昇 → 視床下部が検知 → 発汗・皮膚血管拡張 → 体温低下

※正のフィードバック(例:分娩時のオキシトシン分泌)は例外的機構である。


■ 内部環境とは何か

内部環境とは「細胞外液」を指す。 細胞外液は以下に分類される。

  • 血漿
  • 間質液
  • リンパ液

細胞はこの環境に囲まれており、内部環境の安定が崩れると細胞機能が障害される。


■ 恒常性を担う主な調節系

調節系 特徴
神経系 即時的・短時間作用
内分泌系 遅効性・持続作用
免疫系 異物排除・炎症制御

これらは独立しているのではなく、相互に連関して統合的に働く。


■ 恒常性の具体例

  • 体温調節(約36〜37℃)
  • 血糖調節(インスリン・グルカゴン)
  • 血圧調節(自律神経・レニン-アンジオテンシン系)
  • 酸塩基平衡(pH 7.35〜7.45)
  • 体液浸透圧調節(ADHなど)

■ 恒常性の破綻と病態

恒常性が維持できなくなると、病的状態へ移行する。

  • 発熱(体温調節異常)
  • 糖尿病(血糖調節異常)
  • 高血圧(血圧調節異常)
  • アシドーシス/アルカローシス(pH異常)

病理学は、恒常性破綻のメカニズムを扱う学問とも言える。


■ 東洋医学的視点

東洋医学では、恒常性という概念は「陰陽の調和」「気血水のバランス」として表現される。

  • 陰陽の失調 → 冷え・熱感
  • 気滞 → 自律神経失調様症状
  • 瘀血 → 循環不全

現代医学的な恒常性維持機構と、東洋医学的な「調和」の概念は、 異なる理論体系でありながら、生体のバランス維持という点で共通している。


■ 鍼灸との関連

鍼刺激は、皮膚・筋・結合組織の受容器を介して求心性神経を活性化し、 中枢神経系(特に視床下部・脳幹)に作用する。

  • 自律神経調節
  • 血流改善
  • 内分泌系への影響
  • 抗炎症作用

これらはすべて、恒常性回復方向への調整作用として理解できる。

すなわち、鍼灸治療は「生体の調節機構を再起動・再調整する刺激」と捉えることができる。


■ まとめ

恒常性とは、生体が内部環境を一定に保つための統合的調節機構である。 神経系・内分泌系・免疫系が連携し、体温・血圧・血糖・pHなどを安定させている。

病気とは、恒常性の破綻である。 治療とは、その回復過程への介入である。

鍼灸は、生体本来の調節機構に働きかける方法の一つと考えられる。