生理学 10-3 月経周期

1. 月経周期の概要

月経周期とは、女性の生殖機能を維持するために起こる周期的な生理現象であり、 平均約28日周期で繰り返される。主に 卵巣周期子宮周期が 内分泌ホルモンの調節によって同期して進行する。

この周期は主に 視床下部―下垂体―卵巣系(HPO軸)によって調節され、 以下のホルモンが中心的役割を担う。

  • GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)
  • FSH(卵胞刺激ホルモン)
  • LH(黄体形成ホルモン)
  • エストロゲン
  • プロゲステロン

これらのホルモンは互いにフィードバックを行いながら 卵胞発育、排卵、子宮内膜の変化を周期的に制御している。


2. 卵巣周期

(1) 卵胞期

月経開始から排卵までの期間である。 下垂体から分泌されるFSHにより卵巣内の卵胞が発育し、 卵胞からエストロゲンが分泌される。

エストロゲンの作用により

  • 子宮内膜の増殖
  • 子宮頸管粘液の増加
  • 下垂体へのフィードバック調節

が起こる。

(2) 排卵

エストロゲン濃度が一定以上に上昇すると LHサージが起こり、 成熟卵胞が破裂して卵子が排出される。

これが排卵であり、通常は周期14日前後に起こる。

(3) 黄体期

排卵後の卵胞は黄体となり、 プロゲステロンを分泌する。

プロゲステロンの作用は以下である。

  • 子宮内膜を分泌期へ変化
  • 妊娠成立の準備
  • 基礎体温上昇

妊娠が成立しない場合、黄体は退縮し、 ホルモンが低下して月経が開始する。


3. 子宮周期

(1) 月経期

子宮内膜の機能層が剥離して出血が起こる。 通常3〜7日程度続く。

(2) 増殖期

エストロゲンの作用により子宮内膜が増殖する。

(3) 分泌期

プロゲステロンの作用で内膜腺が発達し、 着床に適した状態になる。


4. 月経周期の神経・内分泌調節

月経周期は 視床下部―下垂体―卵巣系(HPO軸) によって調節される。

調節の流れは以下の通りである。

  1. 視床下部:GnRH分泌
  2. 下垂体前葉:FSH・LH分泌
  3. 卵巣:エストロゲン・プロゲステロン分泌
  4. 子宮:内膜変化

またこの系は

  • ストレス
  • 栄養状態
  • 自律神経
  • 睡眠

などの影響を受けやすい。


5. 月経周期の異常

  • 無月経
  • 月経不順
  • 過多月経
  • 月経困難症
  • 月経前症候群(PMS)

これらは

  • ホルモン異常
  • 自律神経失調
  • ストレス
  • 内分泌疾患

などによって生じる。


【東洋医学的関連】

1. 月経と「腎・肝・脾」の関係

東洋医学では月経は 「腎・肝・脾」三臓の協調 によって維持されると考える。

  • 腎:生殖・精・成長発育
  • 肝:血の貯蔵・疏泄
  • 脾:血の生成

特に腎精は生殖能力の根本とされ、 月経周期や妊娠能力に深く関与する。


2. 衝脈・任脈と月経

月経の調節には 衝脈と任脈 が重要とされる。

  • 衝脈:血海(血の海)
  • 任脈:陰経の総海

衝脈は子宮に密接に関与し、 月経血の生成と循環を担う。

任脈は子宮機能や妊娠維持に関与する。


3. 月経周期と陰陽変化

東洋医学では月経周期を 陰陽の周期変化 として捉える。

周期 東洋医学的状態
月経期 血の排出(陰血の放出)
卵胞期 陰血の充実
排卵期 陰から陽への転化
黄体期 陽気の充実

このバランスが崩れると 月経不順や不妊が生じると考えられる。


4. 月経異常の東洋医学的病因

特に現代女性では 肝気鬱結瘀血 が多いとされる。


【鍼灸との関連】

1. 月経周期と自律神経調整

月経周期は

  • 視床下部
  • 下垂体
  • 卵巣

からなるHPO軸によって調節される。

鍼灸刺激は

  • 視床下部機能
  • 自律神経バランス
  • ホルモン分泌

に影響し、月経周期の調整作用があると考えられている。


2. 月経異常に用いられる代表的経穴

三陰交

婦人科疾患の代表穴。

  • 月経不順
  • 月経困難症
  • 不妊症

などに広く使用される。

関元

腎精を補い、 生殖機能を高める。

血海

血の巡りを改善し、 瘀血を除く。

太衝

肝気を疏通し、 ストレス性月経不順に用いる。


3. 月経周期に応じた鍼灸治療

婦人科鍼灸では 周期療法が行われることがある。

周期 治療方針
月経期 瘀血除去・血行改善
卵胞期 血を補い卵胞発育促進
排卵期 肝気疏通
黄体期 腎陽補助・着床環境改善

4. 臨床での意義

鍼灸臨床では月経周期の理解は非常に重要である。

  • 月経困難症
  • PMS
  • 更年期障害
  • 不妊症

などの婦人科疾患では 月経周期と体調変化の関係 を評価することで より効果的な治療戦略を立てることができる。

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