病理学 2-4 壊死(ネクローシス)

壊死(ネクローシス)とは

壊死(ネクローシス)とは、細胞が強い障害を受けて制御されない形で死亡する現象を指します。

壊死は、虚血(血流不足)、感染、毒性物質、外傷などによって細胞が重大な損傷を受けたときに起こります。

壊死した細胞では細胞膜が破壊され、細胞内容物が周囲の組織へ漏れ出すため、 炎症反応が強く起こるという特徴があります。

この点が、炎症をほとんど伴わない細胞死である「アポトーシス」と大きく異なります。


壊死が起こる主な原因

壊死の原因となる主な要因には次のようなものがあります。

  • 虚血(血流不足)
  • 低酸素
  • 感染(細菌・ウイルス)
  • 毒物・薬物
  • 外傷
  • 強い炎症

特に臨床医学では、虚血による壊死が重要です。

例えば、心筋梗塞や脳梗塞は血流が途絶えることで組織が壊死する病気です。


壊死の形態学的変化

壊死が起こると細胞の形態には特徴的な変化が見られます。

核濃縮(pyknosis)

核が縮小し、濃く染まるようになります。

核崩壊(karyorrhexis)

核が細かく分裂し、断片化します。

核融解(karyolysis)

核が溶けて消失します。

これらの変化は壊死細胞の典型的な特徴です。


壊死の主な種類

凝固壊死

最も一般的な壊死で、虚血によって起こります。

組織の構造はある程度保たれますが、 細胞はすでに死んでいます。

代表例は次の通りです。

融解壊死

組織が酵素によって溶けてしまう壊死です。

脳梗塞や細菌感染による膿瘍などで見られます。

脂肪壊死

脂肪組織が破壊される壊死です。

急性膵炎などで、膵酵素によって脂肪組織が分解されて起こります。

壊疽(えそ)

壊死した組織に感染が加わった状態を指します。

  • 乾性壊疽
  • 湿性壊疽
  • ガス壊疽

などに分類されます。

糖尿病の重症例などで見られることがあります。


壊死と炎症

壊死が起こると細胞内容物が周囲へ漏れ出すため、 免疫系がこれを異物として認識します。

その結果、

が起こります。

壊死は単なる細胞死ではなく、 炎症と組織修復の引き金となる重要な病理現象です。


東洋医学的関連

東洋医学には「壊死」という概念はありませんが、 組織が破壊され機能を失う状態は いくつかの病理概念で説明されています。

特に関連が深い概念として次のものがあります。

瘀血との関連

瘀血とは血液の循環が停滞した状態を指します。

血流が長期間障害されると 組織への栄養供給が低下し、 組織の変性や破壊が起こると考えられています。

これは西洋医学でいう

  • 虚血
  • 組織壊死
  • 慢性炎症

などと関連する可能性があります。

熱毒との関連

感染症や化膿性炎症は 東洋医学では「熱毒」として理解されます。

熱毒が強い場合には、 組織が破壊される病態が生じると考えられています。

これは細菌感染による壊死性炎症などと 対応する部分があります。


鍼灸との関連

壊死した組織そのものを鍼灸で回復させることは困難です。

しかし、壊死が起こる背景には

などが関与していることがあります。

鍼灸治療はこれらの要因に対して次のような作用が期待されています。

例えば虚血性疾患では、 局所の血流改善を目的として鍼灸が用いられることがあります。

また慢性炎症による組織障害では、 筋緊張の緩和や循環改善によって症状の軽減を図ることができます。

東洋医学では、

などの治療方針が取られます。

これらは組織障害の進行を防ぎ、 身体の回復力を高めることを目的としています。


まとめ

  • 壊死は制御されない細胞死である
  • 虚血、感染、毒物などによって起こる
  • 細胞膜破壊により炎症反応を引き起こす
  • 凝固壊死、融解壊死、脂肪壊死などの種類がある
  • 東洋医学では瘀血熱毒などの概念と関連づけられる
  • 鍼灸は血流改善や炎症調整を目的に用いられる

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