炎症の徴候とは
炎症が起こると、身体にはいくつかの特徴的な変化が現れます。 これらを炎症の徴候(炎症の五徴候)と呼びます。
古代ローマの医学者ケルススは炎症の基本徴候として次の4つを挙げました。
- 発赤(rubor)
- 腫脹(tumor)
- 熱感(calor)
- 疼痛(dolor)
さらに後の時代になり、炎症部位の機能が低下する 機能障害(functio laesa)が追加され、 現在では「炎症の五徴候」として理解されています。
① 発赤(ほっせき)
発赤とは、炎症部位が赤く見える現象です。
これは炎症によって血管が拡張し、 局所の血流量が増加することで起こります。
炎症メディエーター(ヒスタミンなど)が作用すると、 細動脈や毛細血管が拡張し、 多くの血液が炎症部位へ流入します。
この血流増加によって皮膚が赤く見えるようになります。
② 腫脹(しゅちょう)
腫脹とは、炎症部位が腫れる現象です。
炎症では血管の透過性が高まり、 血漿成分が血管外へ漏れ出します。
この液体が組織間隙に溜まることで 浮腫(むくみ)が生じ、 腫れとして観察されます。
また白血球の集積や細胞の増殖も 腫脹の原因となります。
③ 熱感
熱感とは、炎症部位が熱く感じられる状態です。
これは発赤と同様に、 血流増加によって局所の温度が上昇することで起こります。
炎症部位では代謝活動も活発になるため、 組織の熱産生も増加します。
その結果、炎症部位が温かく感じられるようになります。
④ 疼痛(とうつう)
疼痛とは炎症部位に痛みが生じることです。
炎症ではブラジキニンやプロスタグランジンなどの 炎症メディエーターが放出され、 痛覚神経を刺激します。
また腫脹によって組織圧が上昇すると、 神経が圧迫され痛みが生じることもあります。
痛みは身体を守る重要な警告信号であり、 損傷部位の過度な使用を防ぐ役割を持っています。
⑤ 機能障害
炎症部位では正常な機能が低下することがあります。
例えば関節炎では、
- 関節が動かしにくくなる
- 動かすと痛みが出る
といった機能障害が現れます。
これは疼痛や腫脹、 組織損傷などが原因となって起こります。
東洋医学的関連
炎症の徴候は、東洋医学の病理概念と非常に対応関係が深いと考えられています。
熱証との関係
炎症の徴候のうち、
- 発赤
- 熱感
は東洋医学でいう熱証の特徴とよく一致します。
熱証では身体に過剰な熱が生じ、
- 皮膚の赤み
- 熱感
- 炎症
などが現れるとされています。
気血の停滞
炎症部位では血流の変化や浮腫が起こります。
東洋医学ではこのような状態を
として理解することがあります。
血流が停滞すると痛みが生じやすくなり、 これは疼痛の発生と対応する概念と考えられます。
腫脹と水湿
炎症による腫れは、 東洋医学では
などの概念と関連づけられることがあります。
体液代謝の乱れによって 余分な水分が組織に滞ると、 腫脹やむくみが生じると考えられています。
鍼灸との関連
鍼灸治療は炎症に伴う症状の緩和に利用されることがあります。
鎮痛作用
鍼刺激は神経系を介して エンドルフィンなどの内因性鎮痛物質の分泌を促し、 痛みを軽減する作用があると考えられています。
血流改善
鍼刺激は局所の血流を改善することが知られており、 炎症部位の代謝産物の除去を助ける可能性があります。
自律神経調整
炎症は自律神経系や免疫系とも密接に関係しています。
鍼灸は自律神経のバランスを調整することで、 炎症反応の過剰な進行を抑える可能性が示唆されています。
東洋医学的治療方針
炎症症状に対しては東洋医学では次のような治療方針が用いられます。
これらの治療によって、 炎症の徴候である発赤・腫脹・疼痛などの改善を図ります。
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