炎症のメディエーターとは
炎症のメディエーター(inflammatory mediators)とは、 炎症反応を引き起こしたり調節したりする生理活性物質のことです。
組織が損傷を受けると、さまざまな細胞や血漿成分から 化学物質が放出されます。
これらの物質は
- 血管拡張
- 血管透過性の亢進
- 白血球の遊走
- 痛みの発生
などを引き起こし、炎症反応の進行を調節します。
炎症メディエーターは炎症反応の中心的な役割を担っています。
炎症メディエーターの主な分類
炎症メディエーターは大きく次の2種類に分類されます。
- 細胞由来メディエーター
- 血漿由来メディエーター
細胞由来メディエーター
細胞由来メディエーターは、 炎症に関与する細胞から放出される物質です。
主に次のような細胞が関与します。
- 肥満細胞(マスト細胞)
- マクロファージ
- 好中球
- 血小板
ヒスタミン
ヒスタミンは炎症の初期に働く重要なメディエーターです。
肥満細胞や好塩基球から放出され、
- 血管拡張
- 血管透過性の亢進
を引き起こします。
これにより発赤や腫脹が生じます。
プロスタグランジン
プロスタグランジンは脂質由来のメディエーターで、 細胞膜の脂肪酸から作られます。
主な作用には次のようなものがあります。
- 発熱
- 疼痛
- 血管拡張
解熱鎮痛薬(NSAIDs)は このプロスタグランジンの生成を抑えることで 炎症や痛みを軽減します。
サイトカイン
サイトカインは免疫細胞が分泌する情報伝達物質です。
代表的なものには
- インターロイキン
- 腫瘍壊死因子(TNF)
- インターフェロン
などがあります。
サイトカインは免疫細胞の活動を調節し、 炎症反応の進行に重要な役割を果たします。
血漿由来メディエーター
血漿由来メディエーターは 血液中のタンパク質から作られる物質です。
主に次のシステムが関与します。
- キニン系
- 補体系
- 凝固系
ブラジキニン
ブラジキニンはキニン系から生成される物質です。
主な作用には次のものがあります。
- 血管拡張
- 血管透過性亢進
- 疼痛の発生
特に炎症の痛みを引き起こす重要な物質とされています。
補体
補体は免疫反応に関わるタンパク質群です。
補体が活性化すると
- 細菌の破壊
- 白血球の遊走促進
- 炎症反応の増強
などが起こります。
炎症メディエーターの働き
炎症メディエーターは互いに影響し合いながら、 炎症反応を調整しています。
主な作用としては次のようなものがあります。
- 血管拡張
- 血管透過性の増加
- 白血球の遊走
- 疼痛の発生
- 発熱
これらの作用によって炎症部位に免疫細胞が集まり、 異物の排除や組織修復が行われます。
東洋医学的関連
炎症メディエーターの概念は、 東洋医学の病理概念と直接一致するわけではありませんが、 いくつかの視点から関連づけて理解することができます。
熱証と炎症物質
炎症メディエーターは 発赤・熱感・腫脹などの炎症症状を引き起こします。
これらは東洋医学でいう
- 熱証
- 火熱
の病態と対応する側面があります。
熱が強くなると炎症反応が強まり、 発赤や腫脹などの症状が強く現れます。
気血の調節
炎症メディエーターは血管拡張や血流変化を引き起こします。
東洋医学ではこれを
- 気の巡り
- 血の巡り
として理解することができます。
気血の流れが滞ると 炎症や痛みが生じやすくなると考えられています。
免疫と正気
東洋医学では身体の防御力を 正気と呼びます。
炎症反応は 身体が外邪に対抗する防御反応であり、 正気の働きの一つと考えることもできます。
鍼灸との関連
近年の研究では、 鍼刺激が炎症メディエーターの働きに影響を与える可能性が示唆されています。
抗炎症作用
鍼刺激は炎症性サイトカインの産生を抑制し、 抗炎症性サイトカインを増加させる可能性が報告されています。
この作用により、 炎症反応の過剰な進行が抑えられる可能性があります。
鎮痛作用
鍼刺激によって
- エンドルフィン
- セロトニン
などの神経伝達物質が放出され、 痛みの伝達が抑制されると考えられています。
これにより炎症に伴う疼痛の軽減が期待されます。
神経・免疫・炎症の調節
炎症は
- 神経系
- 免疫系
- 内分泌系
が相互に関係して起こります。
鍼灸刺激は自律神経を介して これらのシステムに影響を与え、 炎症反応の調節に関与する可能性が考えられています。
まとめ
- 炎症メディエーターは炎症反応を調節する生理活性物質である
- 細胞由来メディエーターと血漿由来メディエーターに分類される
- ヒスタミン、プロスタグランジン、サイトカインなどが代表的である
- 血管拡張、疼痛、発熱などの炎症症状を引き起こす
- 東洋医学では熱証や気血の変化と関連づけて理解できる
- 鍼灸は神経・免疫系を介して炎症反応に影響する可能性がある
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