病理学 5-1 浮腫

浮腫とは

浮腫とは、組織間隙に過剰な水分が貯留した状態を指します。

体液は通常、

  • 血管内
  • 組織間隙
  • 細胞内

の間でバランスを保ちながら存在しています。

しかし、

  • 血管内圧の上昇
  • 血漿タンパクの低下
  • 血管透過性の亢進
  • リンパ流の障害

などが起こると、 水分が血管外へ移動し、 組織間隙に蓄積して浮腫が生じます。


浮腫の分類

局所性浮腫

体の一部に限局して起こる浮腫です。

  • 炎症による浮腫
  • 静脈閉塞
  • リンパ管閉塞

全身性浮腫

体全体に広がる浮腫です。

原因として

  • 心不全
  • 腎疾患
  • 肝疾患
  • 低栄養

などが挙げられます。


浮腫の発生機序

浮腫の発生には、 毛細血管における体液移動のバランスが関係します。

主な機序は次の4つです。

① 毛細血管内圧の上昇

静脈うっ血などにより 毛細血管の内圧が上昇すると、 水分が血管外へ押し出されます。

  • 心不全
  • 静脈閉塞

② 血漿膠質浸透圧の低下

アルブミンなどの血漿タンパクが低下すると、 血管内に水分を保持する力が弱くなります。

  • ネフローゼ症候群
  • 肝硬変
  • 低栄養

③ 血管透過性の亢進

炎症などにより血管壁の透過性が高まると、 タンパク質と水分が組織へ漏出します。

  • 急性炎症
  • アレルギー反応

④ リンパ流の障害

リンパ管は組織間液を回収する役割があります。

リンパ流が障害されると 組織液が回収されず、 浮腫が生じます。

  • リンパ節郭清後
  • 腫瘍によるリンパ閉塞

圧痕性浮腫(pitting edema)

浮腫部位を指で押すと へこみが残る浮腫を 圧痕性浮腫と呼びます。

これは組織間液が増えている状態を示し、 心不全や腎疾患などでよく見られます。


東洋医学的関連

東洋医学では浮腫は 水滞(水湿)の代表的な症状と考えられています。

体内の水分代謝は主に

  • 三焦

の働きによって調節されるとされています。

脾の失調

脾は「運化作用」により 水分代謝を調節するとされています。

脾の働きが弱くなると 水湿が体内に停滞し、 浮腫が生じると考えられます。

腎の失調

腎は水液代謝を司る臓とされます。

腎の機能が低下すると 水分排泄がうまくいかず、 浮腫が生じやすくなります。

肺の失調

肺は水分を全身に散布する 「宣発・粛降」の働きを持つとされます。

この機能が乱れると 水液循環が障害され、 浮腫につながることがあります。

三焦の水道機能

三焦は体内の水分通路とされ、 水液の通り道と考えられています。

三焦の機能が滞ると、 体内の水分循環が障害され、 浮腫が起こると説明されます。


鍼灸との関連

浮腫は鍼灸臨床でも比較的よく見られる症状であり、 水分代謝や循環を整える目的で施術が行われることがあります。

血流・リンパ循環の改善

鍼刺激は局所の血流を改善し、 リンパ循環を促進する可能性があります。

これにより 組織間液の排出が促されると考えられています。

自律神経調整

浮腫には

  • 血管調節
  • 腎機能
  • ホルモン調節

などが関与します。

鍼灸は自律神経系を介して これらの調節機構に影響を与える可能性があります。

筋ポンプ作用の促進

下肢の浮腫では、 筋肉の収縮が弱くなることで 静脈還流が低下することがあります。

鍼刺激により 筋緊張が調整されることで、 筋ポンプ作用が改善する可能性があります。

水滞への施術

東洋医学では浮腫は 水滞の一症状と考えられるため、

  • 三焦

などの機能を整える施術が行われることがあります。


まとめ

  • 浮腫は組織間隙に水分が過剰に貯留した状態である
  • 毛細血管圧上昇・血漿タンパク低下・血管透過性亢進・リンパ障害などで発生する
  • 局所性浮腫と全身性浮腫がある
  • 圧痕性浮腫は体液貯留の重要な臨床所見である
  • 東洋医学では水滞や脾・腎・三焦の失調と関連づけて理解される
  • 鍼灸は循環改善や自律神経調整を通して補助的に利用されることがある

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