生理学 6-4 炎症反応

■ 炎症とは

炎症とは、感染・外傷・化学刺激などによって組織が障害された際に起こる生体防御反応である。 炎症の目的は以下の3点である。

  • 有害因子(細菌・ウイルスなど)の排除
  • 損傷組織の除去
  • 組織修復の開始

炎症は免疫反応と密接に連携し、生体防御の重要な一部を構成する。


■ 炎症の五徴候

古典的には炎症は以下の5つの徴候で説明される。

徴候 機序
発赤(rubor) 血管拡張による血流増加
熱感(calor) 血流増加と代謝亢進
腫脹(tumor) 血管透過性亢進による滲出
疼痛(dolor) 炎症メディエーター刺激
機能障害(functio laesa) 疼痛・腫脹による機能低下


■ 炎症の基本過程

① 血管反応

  • 血管拡張
  • 血流増加
  • 血管透過性亢進

ヒスタミン・プロスタグランジンなどの炎症メディエーターが関与する。

② 白血球の遊走

白血球は血管内皮を通過し、炎症部位へ移動する。

  • ローリング
  • 接着
  • 血管外遊出
  • 走化性

主に好中球が初期反応を担う。

③ 異物の排除

  • 貪食作用
  • 活性酸素産生
  • リソソーム酵素放出

④ 組織修復

炎症後には線維芽細胞の増殖や血管新生により組織修復が行われる。


■ 炎症メディエーター

物質 作用
ヒスタミン 血管拡張・透過性亢進
プロスタグランジン 疼痛・発熱
ロイコトリエン 血管透過性増加
サイトカイン 免疫反応調整
ブラジキニン 疼痛誘発


■ 急性炎症と慢性炎症

急性炎症

  • 短期間
  • 好中球主体
  • 感染・外傷など

慢性炎症

  • 長期間持続
  • マクロファージ主体
  • 組織破壊と修復が同時進行

慢性炎症は多くの疾患の基盤となる。

  • 動脈硬化
  • 糖尿病
  • 自己免疫疾患
  • 慢性疼痛

■ 発熱と炎症

炎症時にはサイトカイン(IL-1・IL-6・TNF-α)が産生され、 視床下部の体温調節中枢に作用し発熱を引き起こす。

これは免疫活性を高める防御反応である。


■ 東洋医学的関連

■ 熱証としての炎症

東洋医学では炎症反応は主に「熱証」として理解される。

  • 発赤
  • 腫脹
  • 疼痛
  • 発熱

これらは「熱」「火」の病理と一致する。

■ 邪気と炎症

炎症は外邪侵入による正邪闘争として理解される。

  • 風熱
  • 湿熱
  • 熱毒

例えば化膿性炎症は「熱毒」と表現される。

■ 気血の停滞と炎症

炎症部位では血流障害が起こり、

  • 瘀血
  • 気滞

が形成される。

慢性炎症は「瘀血」や「痰湿」と関係すると考えられる。

■ 臓腑との関係

  • 肺:皮膚炎・呼吸器炎症
  • 肝:炎症亢進・ストレス炎症
  • 脾:慢性炎症・免疫低下

臓腑の機能失調が炎症の慢性化に関与する。


■ 鍼灸との関連

1)抗炎症作用

鍼刺激は炎症性サイトカインを調整することが報告されている。

  • TNF-α低下
  • IL-1β低下
  • IL-6調整

慢性炎症疾患の症状緩和に寄与する可能性がある。

2)神経免疫調節

鍼刺激は迷走神経反射を介して抗炎症作用を示すとされる。

  • コリン作動性抗炎症反射
  • サイトカイン抑制

これは神経-免疫連関の代表例である。

3)局所循環改善

鍼刺激により以下の作用が起こる。

  • 血流増加
  • 微小循環改善
  • 組織修復促進

これにより炎症産物の除去が促進される。

4)鎮痛作用

炎症性疼痛に対して鍼灸は以下の機序で作用する。

  • 内因性オピオイド放出
  • 脊髄後角抑制
  • 下行性疼痛抑制系活性化

5)慢性炎症体質の調整

慢性炎症体質では以下の経穴がよく用いられる。

免疫調整・炎症抑制・自律神経調整を目的として使用される。


■ まとめ

炎症反応は、生体が損傷や感染に対抗するための重要な防御反応である。

しかし炎症が過剰または慢性化すると、 多くの慢性疾患の基盤となる。

東洋医学では炎症を熱証・熱毒・瘀血などとして理解し、 鍼灸は抗炎症作用・免疫調整・循環改善を通じて 炎症反応の調整に寄与する治療法と考えられている。

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