■ 免疫とは
免疫とは、体内に侵入した病原体(細菌・ウイルス・寄生虫など)や異物、異常細胞を認識し排除する生体防御機構である。
免疫系は大きく次の2つに分類される。
- 自然免疫(先天免疫)
- 獲得免疫(適応免疫)
自然免疫は即時反応型の防御機構であり、獲得免疫は特異性と記憶を持つ高度な防御機構である。
■ 免疫系の主な構成
● 免疫細胞
- 好中球
- マクロファージ
- 樹状細胞
- リンパ球(T細胞・B細胞)
- NK細胞
● 免疫器官
- 骨髄
- 胸腺
- 脾臓
- リンパ節
- 粘膜関連リンパ組織(MALT)
1)自然免疫(innate immunity)
自然免疫は、生まれながらに備わっている非特異的防御機構であり、感染初期の防御を担う。
● 主な特徴
- 反応が速い(数分〜数時間)
- 病原体の共通構造を認識
- 免疫記憶を持たない
● 主な構成要素
| 要素 | 役割 |
|---|---|
| 皮膚・粘膜 | 物理的バリア |
| 好中球 | 細菌の貪食 |
| マクロファージ | 異物貪食・抗原提示 |
| NK細胞 | ウイルス感染細胞・腫瘍細胞の破壊 |
| 補体系 | 細菌溶解・炎症促進 |
● パターン認識
自然免疫はPAMPs(病原体関連分子パターン)を PRR(パターン認識受容体)で認識する。
代表例:Toll様受容体(TLR)
2)獲得免疫(adaptive immunity)
獲得免疫は抗原に対して特異的に反応し、免疫記憶を形成する。
● 主な特徴
- 抗原特異性
- 免疫記憶
- 高い精密性
● 体液性免疫(B細胞)
B細胞は抗原刺激により形質細胞へ分化し、抗体を産生する。
● 抗体(免疫グロブリン)
| 抗体 | 主な特徴 |
|---|---|
| IgG | 血中で最も多い |
| IgA | 粘膜免疫 |
| IgM | 初期免疫 |
| IgE | アレルギー |
| IgD | B細胞受容体 |
● 細胞性免疫(T細胞)
| T細胞 | 機能 |
|---|---|
| ヘルパーT細胞 | 免疫反応の調整 |
| キラーT細胞 | 感染細胞破壊 |
| 制御性T細胞 | 免疫抑制 |
■ 免疫応答の流れ
- 抗原侵入
- 自然免疫による初期防御
- 樹状細胞による抗原提示
- T細胞活性化
- B細胞抗体産生
- 免疫記憶形成
■ 免疫異常
① アレルギー
- 過剰免疫反応
- IgE関与
② 自己免疫疾患
- 自己組織を攻撃
- 関節リウマチ・SLEなど
③ 免疫不全
- 感染防御低下
- 先天性・後天性
■ 東洋医学的関連
■ 正気と邪気
東洋医学では免疫機構は「正気(せいき)」として理解される。
- 正気:体を守る抵抗力
- 邪気:外邪(風・寒・湿・熱など)
正気が充実していれば邪気は侵入できないとされる。
■ 衛気の役割
衛気は体表を巡り、外邪から身体を防御する。
- 皮膚防御
- 体温調節
- 免疫バリア
これは現代医学の自然免疫・皮膚免疫と機能的に類似している。
■ 脾と免疫
脾は「後天の本」とされ、気血生成の中心である。
- 栄養吸収
- 免疫力維持
- 粘膜免疫
脾虚では感染しやすく、慢性疲労や消化機能低下がみられる。
■ 肺と防御機構
肺は「皮毛を主る」とされる。
- 呼吸免疫
- 皮膚防御
- 衛気調整
風邪をひきやすい体質は肺気虚と関連する。
■ 鍼灸との関連
1)免疫細胞活性化
鍼刺激は以下の免疫細胞活性を高めることが報告されている。
- NK細胞
- マクロファージ
- Tリンパ球
感染防御や腫瘍免疫の補助的作用が示唆されている。
2)抗炎症作用
鍼刺激は炎症性サイトカインを調整する。
- TNF-α
- IL-1
- IL-6
慢性炎症疾患の症状軽減に寄与する可能性がある。
3)自律神経と免疫の連関
免疫機能は自律神経と密接に関連する。
- 交感神経:炎症促進
- 副交感神経:炎症抑制
鍼灸は副交感神経を賦活し、免疫バランスを調整する。
4)体質改善への応用
免疫力低下体質では以下の経穴がよく用いられる。
これらは衛気強化・正気充実を目的として使用される。
5)アレルギー疾患への応用
鍼灸は以下の機序でアレルギー症状の軽減に寄与すると考えられる。
- ヒスタミン反応抑制
- IgE調整
- 自律神経調整
臨床では以下の経穴が多用される。
■ まとめ
免疫機構は自然免疫と獲得免疫から構成され、 感染防御・腫瘍監視・組織修復に重要な役割を果たす。
東洋医学ではこれを正気・衛気として捉え、 鍼灸は免疫調整・抗炎症・自律神経調整を通じて 生体防御機構を支える治療法として位置づけられる。
免疫は神経・内分泌と密接に連携する統合システムであり、 鍼灸治療との関連性が近年注目されている。
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