生理学 6-3 免疫機構(自然免疫・獲得免疫)

■ 免疫とは

免疫とは、体内に侵入した病原体(細菌・ウイルス・寄生虫など)や異物、異常細胞を認識し排除する生体防御機構である。

免疫系は大きく次の2つに分類される。

  • 自然免疫(先天免疫)
  • 獲得免疫(適応免疫)

自然免疫は即時反応型の防御機構であり、獲得免疫は特異性と記憶を持つ高度な防御機構である。


■ 免疫系の主な構成

● 免疫細胞

  • 好中球
  • マクロファージ
  • 樹状細胞
  • リンパ球(T細胞・B細胞)
  • NK細胞

● 免疫器官

  • 骨髄
  • 胸腺
  • 脾臓
  • リンパ節
  • 粘膜関連リンパ組織(MALT)

1)自然免疫(innate immunity)

自然免疫は、生まれながらに備わっている非特異的防御機構であり、感染初期の防御を担う。

● 主な特徴

  • 反応が速い(数分〜数時間)
  • 病原体の共通構造を認識
  • 免疫記憶を持たない

● 主な構成要素

要素 役割
皮膚・粘膜 物理的バリア
好中球 細菌の貪食
マクロファージ 異物貪食・抗原提示
NK細胞 ウイルス感染細胞・腫瘍細胞の破壊
補体系 細菌溶解・炎症促進

● パターン認識

自然免疫はPAMPs(病原体関連分子パターン)PRR(パターン認識受容体)で認識する。

代表例:Toll様受容体(TLR)


2)獲得免疫(adaptive immunity)

獲得免疫は抗原に対して特異的に反応し、免疫記憶を形成する。

● 主な特徴

  • 抗原特異性
  • 免疫記憶
  • 高い精密性

● 体液性免疫(B細胞)

B細胞は抗原刺激により形質細胞へ分化し、抗体を産生する。

● 抗体(免疫グロブリン)

抗体 主な特徴
IgG 血中で最も多い
IgA 粘膜免疫
IgM 初期免疫
IgE アレルギー
IgD B細胞受容体

● 細胞性免疫(T細胞)

T細胞 機能
ヘルパーT細胞 免疫反応の調整
キラーT細胞 感染細胞破壊
制御性T細胞 免疫抑制

■ 免疫応答の流れ

  1. 抗原侵入
  2. 自然免疫による初期防御
  3. 樹状細胞による抗原提示
  4. T細胞活性化
  5. B細胞抗体産生
  6. 免疫記憶形成

■ 免疫異常

① アレルギー

  • 過剰免疫反応
  • IgE関与

② 自己免疫疾患

  • 自己組織を攻撃
  • 関節リウマチ・SLEなど

③ 免疫不全

  • 感染防御低下
  • 先天性・後天性

■ 東洋医学的関連

■ 正気と邪気

東洋医学では免疫機構は「正気(せいき)」として理解される。

  • 正気:体を守る抵抗力
  • 邪気:外邪(風・寒・湿・熱など)

正気が充実していれば邪気は侵入できないとされる。

■ 衛気の役割

衛気は体表を巡り、外邪から身体を防御する。

  • 皮膚防御
  • 体温調節
  • 免疫バリア

これは現代医学の自然免疫・皮膚免疫と機能的に類似している。

■ 脾と免疫

脾は「後天の本」とされ、気血生成の中心である。

  • 栄養吸収
  • 免疫力維持
  • 粘膜免疫

脾虚では感染しやすく、慢性疲労や消化機能低下がみられる。

■ 肺と防御機構

肺は「皮毛を主る」とされる。

  • 呼吸免疫
  • 皮膚防御
  • 衛気調整

風邪をひきやすい体質は肺気虚と関連する。


■ 鍼灸との関連

1)免疫細胞活性化

鍼刺激は以下の免疫細胞活性を高めることが報告されている。

  • NK細胞
  • マクロファージ
  • Tリンパ球

感染防御や腫瘍免疫の補助的作用が示唆されている。

2)抗炎症作用

鍼刺激は炎症性サイトカインを調整する。

  • TNF-α
  • IL-1
  • IL-6

慢性炎症疾患の症状軽減に寄与する可能性がある。

3)自律神経と免疫の連関

免疫機能は自律神経と密接に関連する。

  • 交感神経:炎症促進
  • 副交感神経:炎症抑制

鍼灸は副交感神経を賦活し、免疫バランスを調整する。

4)体質改善への応用

免疫力低下体質では以下の経穴がよく用いられる。

これらは衛気強化・正気充実を目的として使用される。

5)アレルギー疾患への応用

鍼灸は以下の機序でアレルギー症状の軽減に寄与すると考えられる。

  • ヒスタミン反応抑制
  • IgE調整
  • 自律神経調整

臨床では以下の経穴が多用される。


■ まとめ

免疫機構は自然免疫と獲得免疫から構成され、 感染防御・腫瘍監視・組織修復に重要な役割を果たす。

東洋医学ではこれを正気・衛気として捉え、 鍼灸は免疫調整・抗炎症・自律神経調整を通じて 生体防御機構を支える治療法として位置づけられる。

免疫は神経・内分泌と密接に連携する統合システムであり、 鍼灸治療との関連性が近年注目されている。

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