生理学 11-2 ストレス反応(HPA軸)

1. ストレスとは

ストレスとは、外界からの刺激(ストレッサー)に対して 生体が示す適応反応である。

ストレッサーには以下のようなものがある。

  • 心理的ストレス(不安、緊張、人間関係)
  • 身体的ストレス(痛み、外傷、感染)
  • 環境ストレス(寒冷、暑熱、騒音)

生体はこれらのストレスに対して 神経系・内分泌系・免疫系を動員し、 恒常性を維持しようとする。


2. ストレス反応の2つの系

ストレス反応は主に次の2つの系によって行われる。

  • 交感神経‐副腎髄質系(SAM系)
  • 視床下部‐下垂体‐副腎皮質系(HPA軸)

SAM系は急性ストレスに関与し、 HPA軸は持続的ストレスに関与する。


3. HPA軸の仕組み

HPA軸とは

  • 視床下部(Hypothalamus)
  • 下垂体(Pituitary)
  • 副腎皮質(Adrenal cortex)

から構成されるストレス反応の内分泌系である。

反応の流れは以下の通りである。

  1. ストレス刺激
  2. 視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)分泌
  3. 下垂体前葉からACTH分泌
  4. 副腎皮質からコルチゾール分泌

コルチゾールは全身の代謝を変化させ、 ストレスへの適応を助ける。


4. コルチゾールの作用

副腎皮質から分泌されるコルチゾールは ストレス適応の中心的ホルモンである。

主な作用は以下である。

  • 血糖上昇(糖新生促進)
  • 脂肪分解促進
  • タンパク分解促進
  • 抗炎症作用
  • 免疫抑制作用

これらの作用により 身体はエネルギーを確保し、 ストレス状況に対応する。


5. 慢性ストレスの影響

ストレスが長期化すると HPA軸が過剰に働き、 コルチゾールが慢性的に高い状態になる。

その結果、以下のような影響が現れる。

  • 免疫低下
  • 睡眠障害
  • 疲労
  • 抑うつ
  • 高血圧
  • 内臓脂肪増加

このような状態は ストレス関連疾患の原因となる。


6. 負のフィードバック

コルチゾールは

  • 視床下部
  • 下垂体

に作用し、 CRHやACTHの分泌を抑制する。

これを負のフィードバックという。

この機構によって 過剰なストレス反応は抑制される。


【東洋医学的関連】

1. ストレスと「肝」

東洋医学では精神活動や情緒の調節には が重要な役割を持つとされる。

肝は疏泄(そせつ)という 気の流れを調整する働きを持つ。

ストレスによって肝の疏泄機能が失調すると

  • イライラ
  • 怒り
  • 抑うつ
  • 胸脇苦満
  • 自律神経症状

などが現れると考えられている。


2. 肝気鬱結

精神的ストレスによって 肝気鬱結という状態が生じるとされる。

これは気の流れが滞った状態であり、

  • 情緒不安定
  • 胸苦しさ
  • 消化不良
  • 月経不順

などの症状が現れる。

現代医学的には 自律神経失調ストレス反応と関連づけて理解されることが多い。


3. 心・脾・腎との関係

慢性的ストレスは 以下の臓腑にも影響すると考えられる。

  • (精神活動)
  • (消化吸収)
  • (生命力・ホルモン)

その結果、

  • 不眠
  • 疲労
  • 食欲低下
  • 冷え

などの症状が生じるとされる。


【鍼灸との関連】

1. 鍼灸と自律神経調整

ストレス反応は

  • 交感神経
  • 副交感神経

のバランスによって調節される。

鍼刺激は自律神経活動に影響を与え、 交感神経過剰状態を緩和する可能性がある。


2. HPA軸への影響

近年の研究では、 鍼刺激が

  • 視床下部
  • 下垂体
  • 副腎

からなるHPA軸に影響を与え、 ストレスホルモン分泌を調節する可能性が示唆されている。

これにより

  • ストレス軽減
  • 睡眠改善
  • 疲労回復

などの効果が期待される。


3. ストレス関連症状への応用

鍼灸は以下のようなストレス関連症状に 臨床応用されることが多い。

  • 自律神経失調
  • 不眠
  • 慢性疲労
  • 頭痛
  • 胃腸機能低下

4. よく用いられる経穴

これらの経穴は

  • 肝気疏通
  • 精神安定
  • 自律神経調整

などを目的として使用される。


まとめ

ストレス反応は 交感神経系HPA軸によって調節される。

HPA軸では 視床下部→下垂体→副腎皮質の経路を通じて コルチゾールが分泌され、 ストレスへの適応を助ける。

東洋医学ではストレスは 肝の疏泄失調として捉えられ、 気の流れの停滞が様々な症状を引き起こすと考えられる。

鍼灸は自律神経やHPA軸に影響を与えることで ストレス関連症状の改善に応用されている。

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